カレントアウェアネス-E
No.384 2020.01.30
E2221
島根大学附属図書館デジタルアーカイブのライセンスの改定
島根大学附属図書館・青柳和仁(あおやぎかずひと)
●概要
島根大学附属図書館デジタルアーカイブでは,搭載している画像の二次利用ライセンスとしてクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を適用してきたが,2019年9月30日から新しい二次利用ライセンスを適用した。本稿は,この改定について述べるものである。
●本学デジタルアーカイブの特徴
本学のデジタルアーカイブの特徴としては,他機関や個人が所有している資料をデジタル化したコンテンツを搭載しているほか,画像の公開範囲を制御できるアクセス制限機能がある。この機能では,資料の性質や原本所有者の意向等により,「公開コンテンツ」,「学内コンテンツ」,「認証コンテンツ」の3つの公開範囲を設定することができる。「公開コンテンツ」はインターネットを通じてどこからでもアクセスできるコンテンツであり,「学内コンテンツ」は島根大学内のネットワークからのみアクセスできるコンテンツである。「認証コンテンツ」は,ユーザID及びパスワードによる認証を行ってからアクセスできるコンテンツである。
●改定以前の二次利用ライセンス
本学のデジタルアーカイブでは,公開コンテンツである場合は,所蔵館として「島根大学附属図書館」を表示すれば自由に二次利用ができるものとしてきた。この画像の二次利用ライセンスとして,長らくCCライセンスの表示(CC BY)のロゴと条文へのリンクを表示して運用してきた。CC BYは,これが適用されたコンテンツについて著作権者名を表示すれば自由に二次利用をして良いというライセンスであり,本学デジタルアーカイブの二次利用ライセンスについては,著作権者の部分を所蔵館に置き換えたものだと言えるという解釈で,これを準用するという名目で適用してきたのである。しかし,これには問題点がいくつかあった。まず,本学デジタルアーカイブでは基本的に著作権保護期間満了後のコンテンツを搭載しているが,CC BYはそもそも著作権保護期間内のコンテンツについて適用されるライセンスである。また,著作権者でもない所蔵者としてクレジット表示を課すことはCC BYの条文から読み取れるものではない。そのため,本学のデジタルアーカイブのコンテンツにCC BYを適用したところで,ライセンスとしての意味をなさないばかりか,利用者にとっても本学が求めている条件が伝わりにくいものであった。
●改定後の二次利用ライセンス
改定後のライセンスは,ライセンス条文のページと,このページへのリンクになっているオリジナルのライセンスロゴで構成される。ライセンス条文のページではまず先頭に,画像の閲覧に関する条件(公開制限)・画像を複製する場合の条件・画像を二次利用する場合の条件の概要を表示し,その下にそれぞれの条件の詳細と問い合わせ先を表示している。ライセンスロゴは,コンテンツの原本所有者とアクセス制限,コンテンツの著作権の状態を表現したロゴになっており,コンテンツの閲覧画面や検索結果一覧画面で表示される。
以下では,それぞれの場合でライセンスにどのような違いがあるかを簡単に紹介する。
●原本所有者による違い
原本所有者が島根大学附属図書館である場合は,ライセンス条文では「島根大学附属図書館所蔵」と表示すれば自由に二次利用できる旨を記載しており,ライセンスロゴには島根大学のシンボルと「Shimane University Library」が表示されている。一方,原本所有者が学外の機関や個人である場合,例えば松江市の野津家所蔵のものであれば,ライセンス条文では原本所有者が野津家である旨と,二次利用の際には申請手続きが必要であることを記載し,ライセンスロゴには「The Notsu Family」と表示している。
●公開範囲による違い
コンテンツの公開範囲に応じて,ライセンスロゴには「Accessible Anywhere」(公開コンテンツ),「On-Campus Use Only」(学内コンテンツ),「Login Required to Use」(認証コンテンツ)と表示し,ひと目で公開範囲がわかるようにしており,ライセンス条文にも公開範囲や,学内コンテンツを学外の利用者が閲覧する場合の手続き方法を記載している。
●著作権の状態による違い
本学デジタルアーカイブに搭載しているコンテンツの多くは著作権保護期間が満了したものであり,これらのコンテンツのライセンスロゴには「No-Copyright」と表示している。しかし,山陰新聞等の地方新聞については,一部の署名記事にまだ著作権保護期間内のものがある可能性があることから,ライセンスロゴには「Copyright NOT Evaluated」(著作権未評価)と表示し,複製を制限している。
以上,本学デジタルアーカイブの二次利用ライセンスを簡単に紹介したが,参考になれば幸いである。
Ref:
https://www.lib.shimane-u.ac.jp/new/2019100200096/
https://da.lib.shimane-u.ac.jp/content/
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja