E2076 – 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2018/11/20現在)

カレントアウェアネス-E

No.358 2018.11.22

 

 E2076

東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2018/11/20現在)

 

 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況について,本誌での既報(E2043ほか参照)に続き,2018年7月下旬から2018年11月中旬までの主な情報を紹介する。

●被災地の図書館等の活動

 8月31日,名取市図書館(宮城県)が,2018年12月19日に名取駅前に開館予定の新図書館の開館準備のため,震災後に開設された「どんぐり子ども図書室」,「どんぐり・アンみんなの図書室」でのサービスを終了した。これに先立ち,8月25日に,同館による「図書館まつり2018」が「ありがとう,どんぐり図書室~これまでも,これからも~」をテーマに開催された。
https://lib.city.natori.miyagi.jp/web/event/1064
https://lib.city.natori.miyagi.jp/web/event/1049
http://lib.city.natori.miyagi.jp/web/wp-content/uploads/2017/12/618a1bb8ba58670d31cb9ffd7ad6b025.pdf

 9月,陸前高田市立図書館(岩手県)が,新館開館(E1956参照)のために休止していた移動図書館の運行を再開した。
http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/tosyokan/main/osirase/2018/0824/idou-tosyokan.html

 9月4日,一般社団法人三陸アーカイブ減災センターが,復興庁の被災者支援総合事業(心の復興事業)として陸前高田市からの委託を受けた震災拾得物「思い出の品」の返却活動を再開した。
http://www.shinsai-archive.org/
https://www.facebook.com/takata.omoide/posts/2685196988172672

 10月1日,震災による津波で庁舎が全壊した女川町(宮城県)で新庁舎が開庁し,庁舎1階に位置する生涯学習センターの図書室が同日開室した。
http://www.town.onagawa.miyagi.jp/kouhou/2018_09.pdf

 震災後にインドネシア政府からの寄付金も活用して再建された気仙沼市立気仙沼図書館(宮城県)が,2018年9月28日にインドネシア・スラウェシ島で発生した地震を受け,10月5日から,気仙沼小学校・気仙沼市国際交流協会と共同で,被災者に送るメッセージ・寄せ書きの募集及び募金を行った。メッセージ・寄せ書きは,10月13日から10月15日にかけてインドネシアを訪れた気仙沼市長により同国政府に手渡された。
https://www.facebook.com/kesennuma.toshokan/posts/2170062716615611
https://www.facebook.com/kesennuma.toshokan/posts/2174391382849411
http://www.kesennuma.miyagi.jp/sec/s002/020/030/050/010/090/3010/2018-10-23_shougaigakushuka_india.pdf

●デジタルアーカイブに関する動き

 国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)においてこれまでも連携してきた国立国会図書館と国立研究開発法人防災科学技術研究所が,8月31日,連携協力に関する協定を締結した。
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2018/180903_01.html
http://www.bosai.go.jp/press/2018/index.html
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2018/__icsFiles/afieldfile/2018/08/30/pr180903_01.pdf

 国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)に,以下のコンテンツが追加された。

  • 国立国会図書館が2012年10月から2014年9月までに行った,被災した岩手県指定有形文化財「吉田家文書」の修復作業の模様を撮影した写真40点(8月31日)
  • 岩手未来機構から提供を受けた,スペイン出身の芸術家シシリア(José María Sicilia)氏と同機構による震災被災地でのワークショップ活動の記録(9月20日)
  • 「利活用の取組」のページをリニューアルした,地震・津波の年表や震災の記録等の活用例等を収録したページ「ひなぎくを使ってみよう!」(10月12日)

http://kn.ndl.go.jp/static/2018/08/31
http://kn.ndl.go.jp/static/2018/09/20
http://kn.ndl.go.jp/static/2018/10/12
http://kn.ndl.go.jp/static/rikatuyou

●展示

 宮城県図書館の「東日本大震災文庫」で,6月26日から9月9日まで「行って見て聴く 震災と今」,9月11日から11月10日まで「震災から考える“備え”」と題したミニ展示が行われた。
http://www.library.pref.miyagi.jp/latest/events/exhibition/1176-shinsaibunko-201806.html
http://www.library.pref.miyagi.jp/latest/events/exhibition/1223-shinsaibunko-201809.html

 6月30日から8月30日まで,岩手県立図書館で,飾り棚展示「新聞は復興をどう伝えたか」が行われ,東日本大震災の翌年である2012年以降の3月11日の同館所蔵新聞のうち「震災」や「復興」を取り上げている紙面の一部が展示された。
https://www.library.pref.iwate.jp/info/evecale/minitenji/201807_kazari_shinsai.html

 8月3日から9月28日まで,公益社団法人全国市有物件災害共済会が運営する防災専門図書館(東京都千代田区)で,東日本大震災復興支援プロジェクト「笑顔を届けるプロジェクト in school library 防災専門図書館 ver.」として,「笑顔を届けるプロジェクト in school library」の活動を行っているキハラ株式会社が提供する防災教育関連資料が展示された。
https://www.city-net.or.jp/library/archives/3352

 8月10日から9月2日まで,むつ市立図書館(青森県)で,立命館大学人間科学研究科(大阪府)の震災復興支援プロジェクト「東日本・家族応援プロジェクトinむつ2018」の一環として,同大学教授で漫画家の団士郎氏による家族をテーマにした漫画展が開催された。9月1日には,団氏による漫画トークが行われた。多賀城市立図書館(宮城県)でも,「東日本・家族応援プロジェクトin多賀城2018」として,10月5日から10月21日まで同内容の漫画展が開催された。10月6日には,民話や絵本,遊びのワークショップや,団氏による漫画トークが行われた。
http://www.ritsumei.ac.jp/gshs/info/detail/?id=27
http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=385890
http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=389547
https://tagajo.city-library.jp/library/ja/event_page/1036
https://tagajo.city-library.jp/library/ja/event_page/1037
https://tagajo.city-library.jp/library/ja/event_page/1038

●イベント,講演会,講習会,研究会など

 7月22日から8月7日まで,アバッセたかた(岩手県陸前高田市)で,陸前高田市立図書館が主催するDVD上映会「東北の鎮魂復興陸前高田うごく七夕まつり」が開催された。
http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/tosyokan/main/event/2018/0702/tanabata-maturi.html
http://abassetakata.jp/archives/event/1246

 7月29日,せんだいメディアテーク(仙台市)で,仙台市民図書館に設けられた「3.11震災文庫」の本について語る「座談会「震災文庫」を読む」が開催された。
https://www.smt.jp/projects/toplus/2018/06/post-19.html
https://lib-www.smt.city.sendai.jp/?action=common_download_main&upload_id=1753

 9月1日,岩手県立図書館が,定期的に開催している館内見学ツアーを,防災の日に合わせて「語り継ぐあの日の図書館と『震災関連資料コーナー』」として特別開催した。
https://www.library.pref.iwate.jp/info/evecale/sanpo/201809.html#d20180901-1330

 9月1日,名古屋市鶴舞中央図書館で,同館の司書による報告会「震災からの復興支援~陸前高田市立図書館への司書派遣報告」が開催された。あわせて,8月18日から9月20日まで,派遣された司書が行った業務の様子や陸前高田市を紹介した写真及び東日本大震災関連書籍が同館で展示された。
https://www.library.city.nagoya.jp/oshirase/topics_event/entries/20180809_05.html
https://www.library.city.nagoya.jp/img/oshirase/2018/hoshi2_201808_4_1.pdf

 9月24日,せんだいメディアテークで,相馬高校(福島県)放送局の震災後制作作品上映を主たる目的とした任意団体「相馬クロニクル」及び3がつ11にちをわすれないためにセンターが主催する「相馬クロニクルダイアログ」第2回が,「ふるさと」をテーマに開催され,震災後の福島県双葉郡浪江町を題材とした音声・映像作品が上映された。
https://recorder311.smt.jp/information/58212/

 9月28日,国立国会図書館が,同館国際子ども図書館で,震災被災地でワークショップを開催してきたシシリア氏による講演会「ホセ・マリア・シシリア 想起に導かれて,東北の子供達とともに」を開催した。
http://www.kodomo.go.jp/event/event/event2018-13.html#event

 10月14日,国立国会図書館が,東京都江東区で行われた防災推進国民大会2018で,セッション「震災記録のポータルサイト~使ってみよう東日本大震災アーカイブ」を開催した。
http://kn.ndl.go.jp/static/2018/09/061

 11月9日,NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI(東京都千代田区)で,筑波大学図書館情報メディア系が主催する第10回DAN(Digital Archive Network)ワークショップが開催された。東北大学災害科学国際研究所の柴山明寛氏による講演「東日本大震災から7年半経過したみちのく震録伝の今後の役割について」や,国立国会図書館電子情報部の池田勝彦・山口聡による講演「国立国会図書館におけるつなぐアーカイブ~国立国会図書館東日本大震災アーカイブやジャパンサーチについて~」等が行われた。
http://www.mi3.or.jp/news/10.html

 11月10日,郡山市民交流プラザ(福島県)で,日本学術会議社会学委員会東日本大震災後の社会的モニタリングと復興の課題検討分科会主催公開シンポジウム「震災・復興資料の収集・アーカイブズ化の現状と今後の課題」が開催された。
https://fure.net.fukushima-u.ac.jp/blog/2018/10/09/公開シンポジウム「震災・復興資料の収集・アー/

 11月12日,日本図書館協会(東京都中央区)で,同協会資料保存委員会が主催する資料保存セミナーが,「東日本大震災と原発事故から再開館までの歩み~全町避難の町・富岡町の図書館~」をテーマに開催された。
http://www.jla.or.jp/committees/hozon//tabid/121/Default.aspx

●被災地を支援する動き

 徳島県で開催されるイベント「マチ★アソビ」で震災後に始まったチャリティーオークションの収益金で作られた移動図書館車が,11月9日,各地を巡って献本を受け付ける「献本キャラバン」を開始し,11月16日,南三陸町(宮城県)に到着して同町に寄贈された。
http://www.machiasobi.com/machibook/
http://www.ufotable.com/kpf2018/index.html

●刊行物

 『カレントアウェアネス-E』356号(2018年10月25日)が,岡野治子氏による「町民の居場所としての図書館:大槌町立図書館の開館」を掲載した。
http://current.ndl.go.jp/e2065

関西館図書館協力課調査情報係