E1940 – 図書館総合展2017フォーラムin熊本<報告>

カレントアウェアネス-E

No.330 2017.08.10

 

 E1940

図書館総合展2017フォーラムin熊本<報告>

 

 図書館総合展は,毎年秋に横浜で開催する本展のほか,「地域フォーラム」と称したイベントを各地で行っている。2017年7月10日に開催したフォーラムin熊本は,2017年中に4回開催するうちのひとつである。図書館総合展運営委員会では,2012年にフォーラムin仙台(E1299参照)を開催して以来,本展でも地域フォーラムでも,被災地の図書館を取り上げ続けることを方針としている。今回の開催地を平成28年熊本地震により被害を受けた熊本とし,「災害と図書館の役割」をテーマとしたのもその一環である。

 しかし,事の次第はそう単純ではない。災害報道やそれを受ける国民の関心同様,被災をテーマにする図書館イベントや展示は,災害発生時から時が経つにつれ,来場者が都度都度減ってゆく。「図書館人たるもの,後世に記録と記憶を留める役目を担っているのだから,少なくとも一般の方々よりは長いスパンで関心を維持してほしいもの」と感じつつ,私ども運営側もまた「被災状況の報告や復興計画の説明,支援の呼びかけ」に内容が寄りがちであった企画力の甘さを反省しているところであった。そこへ,公益社団法人全国市有物件災害共済会防災専門図書館の堀田弥生氏から,このフォーラムの展示企画についての提案があった。

 阪神・淡路大震災を受けて1995年に資料の収集を開始した神戸大学附属図書館の震災文庫(CA1853参照)以来,被災地域の図書館が災害関連資料を収集するという流れができている。一方,「収集開始時のスタッフが異動等でいなくなったあとの運営がなかなか…」「何でも集めればよいのか」「被災者の思い出の品の保存とアーカイブが混同されがちな風潮がある」「収集された資料はどのように役立つのか」等々,時間が経ち実施機関も増えればいろいろ課題・悩みも出ているという。

 ならば,災害アーカイブ実施館がどこにあるか一覧できるようにし,ひいては担当者間の情報交換を進められるようになればよい,というのが堀田氏からの提案の主旨であった。そこで展示「全国の災害アーカイブ実施図書館」を企画した。参加館を募集したところ,応募があったのは27館28事業であった。当日は,各事業を紹介するパネルを展示した。各館の展示パネルについては8月中旬に国立研究開発法人防災科学技術研究所のウェブサイトでも公開する予定である。

 講演パートでは,展示にあわせて災害アーカイブの現状と展望について報告を行ったほか,災害復旧や防災のために種々のデータがどのように活用されてゆくか(防災科学技術研究所の地図ツールの事例),災害アーカイブについて図書館と博物館等の機関はいかに連携し得るか(熊本の事例),熊本地震の被災図書館の復興と現状(益城町,菊陽町の事例)が論じられた。図書館総合展の公式ウェブサイトで,当日の講師の発表資料を順次公開しているので参照されたい。

 今回のフォーラムでは,被災時に災害資料の収集を始めた担当者本人が何人も参加していた。講演の合間に,所々で彼らを囲む情報交換がなされていたのが印象的であった。

 フォーラム後も引き続き,以下の取組を行っている。

  1. 「全国の災害アーカイブ実施図書館」を引き続き募集している。2017年の本展でも各事業の紹介パネルを展示し,各館の発行している紹介資料を配布する予定である。本展の展示会場内では,災害アーカイブについての意見交流会を予定している。
  2. 「全国の災害アーカイブ実施図書館」紹介パネルの貸出申込みを受け付けている。貸出をご希望の方は運営委員会まで連絡されたい。
  3. フォーラムで堀田氏から案内のあった,防災科学技術研究所の総合防災情報センター自然災害情報室が運営する,「災害資料アーカイブを構築する機関のためのメーリングリスト」への参加を引き続き募集している。

 上述のとおり,2017年11月7日から11月9日まで開催予定の本展でも,災害アーカイブ関連の催しを予定している。ぜひご来場いただきたい。

図書館総合展運営委員会・長沖竜二

Ref:
https://www.libraryfair.jp/news/5550
https://www.libraryfair.jp/news/5535
http://www.bosai.go.jp/
http://dil.bosai.go.jp/link/archive/
https://www.libraryfair.jp/sites/default/files/ML_disaster_archive.pdf
E1299
CA1853