E1908 – デジタルリポジトリ連合(DRF)の活動を振り返って

カレントアウェアネス-E

No.324 2017.04.27

 

 E1908

デジタルリポジトリ連合(DRF)の活動を振り返って

 

 日本の機関リポジトリの連合組織,デジタルリポジトリ連合(Digital Repository Federation:DRF)は2017年3月末で解散し,およそ10年に及ぶ歴史の幕を閉じた。DRFの歴史はこの間の日本における機関リポジトリおよびオープンアクセス(OA)運動の歴史とほぼ重なると言っても過言ではない。この機会にDRF設立以来の活動を振り返り,その意義や解散に至る経緯と今後の見通しなどについて整理してみたい。

 DRFは2006年,北海道,千葉,金沢の三国立大学の図書館員が中心となって設立された。財政的には国立情報学研究所(NII)の「次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業」の委託という形で支援を受け,ウェブサイトおよびメーリングリストの開設,ワークショップの開催などの活動を開始した。当初の加盟は25機関だったが,2006年11月に千葉大学,2007年2月に早稲田大学で開催されたワークショップには,それぞれ103名(67機関),140名(76機関)の参加者があり,翌2007年度には加盟機関数は58に増えた。以後,リポジトリ設置機関が急増するのと歩調を合わせてDRFへの加盟数も順調に増え,2010年度には112機関,最終の2016年度には157機関となった。

 DRFの活動は,OAを擁護する立場なので当然ではあるが,開放的であることが特色だった。メーリングリストは広く一般に公開され,機関リポジトリ担当者や図書館員だけでなく,出版関係者や研究者も交えて,自由闊達な議論が行われた。2010年2月に創刊された電子版の情報誌『月刊DRF』はもちろんOAで,全国の図書館員が交代で編集作業に携わった。DRF解散時までの7年に渡って87号を刊行し,リポジトリ運営に関する情報共有やOA思想の普及に貢献した。

 もう一つの特色として,グローバル(国際)性とローカル(地域)性の両側面を併せ持っていたことがあげられる。

 グローバルな側面としては,「デジタルリポジトリ連合国際会議(DRFIC)」を2008年1月に大阪大学(E750参照),2009年12月に東京工業大学で,二度に渡って開催したことが特筆される。また,2009年10月の国際組織「オープンアクセスリポジトリ連合(Confederation of Open Access Repositories:COAR)」の発足に際しては,設立メンバーとして加盟している(E992参照)。これらは,これまで海外に情報を発信することが少なかった日本の大学図書館界にとって画期的な出来事だった。以後,他の国際会議にも参加者を派遣している。

 ローカルな側面としては,地区ごとに行われた地域ワークショップが挙げられる。これは2007年11月の岡山大学(中国・四国地区)を皮切りに,毎年何か所かで開催されている。全国レベルでのワークショップや研修(オンラインのものを含む)と合わせて,人材育成に大きな役割を果たした。

 しかしながら,NIIのDRFへの事業委託が2012年度で終了し,十分な活動資金が得られなくなったため,DRFの活動は縮小せざるを得なくなった。2013年度以降はワークショップの開催などは激減し,『月刊DRF』の発行とオンラインでの勉強会が細々と行われる程度となった。上述のCOARの年会費の支払いも有志の寄付に頼る状態で,運営資金の確保が喫緊の課題であった。

 一方,NIIは2012年度からクラウド型の機関リポジトリ環境提供サービスJAIRO Cloudの運用を開始し,多くの大学・研究機関がこれを利用するようになった。DRFはJAIRO Cloudの説明会に講師を派遣するなど協力関係を築くが,別にJAIRO Cloudのコミュニティも形成され,機関リポジトリの運用などに関する情報交換の場はそちらにシフトしていった。

 NIIと大学図書館は,DRFへの事業委託終了後の2013年7月,連携・協力推進会議のもとに「機関リポジトリ推進委員会」を設置していたが,2015年10月,同委員会の下に「機関リポジトリ新協議会(仮称)設立準備会」が置かれ,DRFに代わり得る組織を設立するための検討が本格化した。そして2016年7月,「オープンアクセスリポジトリ推進協会(Japan Consortium for Open Access Repository:JPCOAR)」が正式に発足した(E1830参照)。これを受けてDRFは,加盟機関の3分の2以上から同意を得て,2016年度末での解散を決定した。

 JPCOARはDRFと異なり会費を徴収する。また,JAIRO Cloud利用機関には参加を義務付けていることもあって,2017年4月10日現在,DRFの3倍近い458機関が参加している。財政的にも人的資源の面においても安定した活動基盤を持つと言えよう。

 DRFはJPCOARに対して主な活動を継承してほしいとの要望書を提出し,受諾の回答を得ている。実際のところ,JPCOARに携わるメンバーの多くがDRFで活躍した人々でもあり,活動の継続性に不安はない。大きな足跡を残した事業を無事完結させたばかりでなく,より強力な後継組織の設立まで実現させた関係者の努力に敬意を表すると共に,JPCOARの順調な発展を祈念して結びとしたい。

首都大学東京学術情報基盤センター・栗山正光

Ref:
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?History
http://julib.jp/ojs/index.php/daitoken/article/view/29/9
https://community.repo.nii.ac.jp/
https://ir-suishin.repo.nii.ac.jp/
https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?plugin=attach&refer=Digital%20Repository%20Federation&openfile=DRF-Dissolution.pdf
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?plugin=attach&refer=%E6%9C%88%E5%88%8ADRF&openfile=DRFmonthly_87.pdf
E750
E992
E1830