E992 – オープンアクセス支援のための国際連携組織“COAR”が発足

カレントアウェアネス-E

No.161 2009.11.18

 

 E992

オープンアクセス支援のための国際連携組織“COAR”が発足

 

 2009年10月21日,オープンアクセスの実現を支援するための国際連携組織「オープンアクセスリポジトリ連合」 (Confederation of Open Access Repositories(COAR))が発足し,日本からはデジタルリポジトリ連合(DRF)及び国立情報学研究所が参加した。COARは欧州委員会第七次基本計画に基づく「欧州における学術研究のためのデジタルリポジトリ基盤構想」(Digital Repository Infrastructure Vision for European Research (DRIVER);E939参照)プロジェクトを中心に,世界各地の研究者,図書館関係者により,設立が検討されていたものである。

 COARの設立に先立ち,10月20日にベルギーのゲント大学図書館で行われた「DRIVERサミット」において,DRIVER科学コーディネーターのロッソウ(Norbert Lossau)氏(独ゲッチンゲン州立・大学図書館長)は,COARの目的について,「オープンアクセスリポジトリの国際的接続を通じ,学術研究の視認性を向上させ,その新たな展開を促進すること。そして,ネットワーク社会における世界規模の知識基盤の構築と普及に努めること」であると述べた。同サミットでは,プロジェクト参加機関が分担して推進してきたさまざまな調査研究開発の成果や,欧州各地のオープンアクセスリポジトリの現況が報告された。DRIVERプロジェクトは2009年12月に第二期活動の終了を予定しており,COARはそのネットワーク形成の部分を引き継いで,この取り組みを世界規模に拡大する。

 2009年10月21日に同じ会場でCOARの設立会議が開催され,欧州,アジア,北米の17カ国,28機関が創設メンバーとして参加した。創設メンバーによる投票により,議長にロッソウ氏,副議長に筆者,財務担当理事にメディナ(Alicia Lopez Medina)氏(スペイン国立通信教育大学)が選出された。初期段階の優先課題としては,(1) 組織体制の確立,(2) コミュニティ形成,(3) 活動の普及,(4) 国際連携が挙げられ,国際連携活動の柱として,永続識別子への対応,引用分析,学術出版との協働,要素技術における相互運用性の向上を当初の活動領域とすることとなった。現在,創設メンバー28機関に加えて新たな参加機関の募集が予定されており,2010年3月に第1回総会が開催される予定である。

 2009年12月3,4日の2日間にわたって東京工業大学で開催されるデジタルリポジトリ連合国際会議2009(DRFIC2009;E750参照)では,メディナ氏が来日し,COARの意義と構想を踏まえ,研究,教育のライフサイクルにおいてデジタルリポジトリが今後果たすべき主軸的役割について講演を行う予定である。

(北海道大学附属図書館・杉田茂樹)

Ref:
http://www.driver-repository.eu/DRIVER-COAR.html
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%2F20091021
http://www.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=981
http://www.driver-community.eu/
http://www.driver-repository.eu/DRIVER-Confederation-Summit.html
http://drfic2009.jp/
E750
E939