E1830 - オープンアクセスリポジトリ推進協会の発足

カレントアウェアネス-E

No.309 2016.08.18

 

 E1830

オープンアクセスリポジトリ推進協会の発足

 

 2016年7月27日,日本における機関リポジトリの振興とオープンアクセス(OA)並びにオープンサイエンスの推進を目的とした「オープンアクセスリポジトリ推進協会」(Japan Consortium for Open Access Repository:JPCOAR,以下協会)が発足した。

◯設立の背景と経緯
 日本の機関リポジトリ設置機関数は600を超え(2016年7月現在,国立情報学研究所(NII)調査),世界有数のリポジトリ大国となっている。ここに至るまで,デジタルリポジトリ連合(DRF)や機関リポジトリ推進委員会などが,それぞれ様々な活動を展開して,大学等の学術研究機関のOA推進の一端を担ってきた。

 一方,欧米をはじめ世界規模で公的研究資金の助成を受けた研究成果に対するOAの義務化が進みつつある。日本においても2015年3月に内閣府が公表したオープンサイエンスに関する報告書(E1681参照)は,論文のOA化推進に加え,研究データの公開についても言及している。その後,文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会学術情報委員会の報告書「学術情報のオープン化の推進について(審議まとめ)」,日本学術会議による「オープンイノベーションに資するオープンサイエンスのあり方に関する提言」などが相次ぎ,OAに寄与することは,単なる図書館の活動にとどまるものではなく,個々の研究者や大学・研究機関にとって必須となりつつある。この急速な時代の変化に対応するには,国内の大学・研究機関の力を結集する新しいコミュニティが必要となっている。

 以上のような認識に基づき,2015年10月,機関リポジトリ推進委員会の下に設置された「機関リポジトリ新協議会(仮称)設立準備会」は,新しいコミュニティの組織形態・重点目標・活動計画等について検討を続けてきた。そして2016年4月,会則・規程案を公表し,参加機関の募集を開始した。

◯設立総会
 2016年7月27日,学術総合センター(東京都千代田区)において設立総会を開催し,事前に参加の意思を表明した376機関のうち137機関(委任状提出:228機関)から179名が出席した。初めに会則案が審議され,一部の記述修正が事務局預かりとなったものの,骨格部分は承認され,正式に発足した。その後,会則に従い会長の選出が行われ,初代会長館には早稲田大学が選出された。早稲田大学図書館長の深澤良彰氏からは「重点目標をしっかり実行していくため,協力をお願いしたい」との挨拶があり,以降は深澤館長による司会で議事が進行した。監事館には立教大学と信州大学が選出された。引き続き,運営委員会規程,会費規程の審議でも活発な質疑が交わされ,会則案等についての一部修正は事務局が後日報告することを条件に承認されて設立総会は終了した。

◯協会の概要

  • 協会は,NIIと国公私立大学図書館協力委員会の間に交わされた連携・協力の推進に関する協定書に基づき,設置される。
  • 会員の資格は,(1)国立大学図書館協会,公立大学協会図書館協議会,私立大学図書館協会のいずれかに属する図書館,(2)NIIの共用リポジトリサービスを利用する機関のリポジトリを担当する部局等,(3)NII,(4)協会の目的に賛同する大学図書館等の施設であって総会において承認されたもの,とする。
  • 円滑に事業を遂行するため,運営委員会を置く。ただし,当面は,機関リポジトリ推進委員会をもって代える。
  • 事務局はNIIに置く。
  • 当面の重点目標は,(1)オープンサイエンスを含む学術情報流通の改善,(2)リポジトリシステム基盤の共同運営と有効活用,(3)リポジトリ公開コンテンツのさらなる充実,(4)担当者の人材育成のための研修活動,(5)国際的な取組みに対する積極的連携,とする。
  • 重点目標(2)に基づき,現在,NIIが提供している共用リポジトリサービスJAIRO Cloudは,NIIと協会の共同運営に移行する。
  • 2017年4月から会費の徴収を予定している。

◯今後の展望
 事務局では,あらためて2016年秋に参加機関を募集することにしており,2016年11月には第18回図書館総合展でフォーラムを開催する。

 今後,予定している活動は以下のとおりである。

重点目標(1):オープンサイエンスを含む学術情報流通の改善に関して,会員機関が取り組むべき課題の情報を共有する。

重点目標(2):システム基盤の高度化を図る。導入機関の多いJAIRO CloudについてはNIIと共同運営とし,サポートの充実,利用機関の要望に基づく機能改善等を行う。

重点目標(3):会員機関相互の情報交換の場を創設し,リポジトリ運用上の工夫やシステム機能改善に関して情報共有を行う。また,機関リポジトリやOAの普及のための広報・普及活動を行い,リポジトリコンテンツのさらなる充実を図る。

重点目標(4):会員機関における運用上・システム上の課題解決・情報共有のために,担当者の習熟段階や担当主題に応じた研修を実施する。集合研修への参加が難しい機関に配慮し,オンライン環境で自己学習できる環境を整備する。

重点目標(5):海外動向の収集・紹介,国際会合への参加および事例発表を通じ,国際的な取組みに対して積極的に連携する。

 このほか,年度ごとに事業計画を立案し,総会の承認を得て実施していく。

機関リポジトリ推進委員会・江川和子

Ref:
https://www.nii.ac.jp/content/cpc/org/pdf/0_kyotei.pdf
https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/
https://ir-suishin.repo.nii.ac.jp/
https://ir-suishin.repo.nii.ac.jp/?page_id=27
http://www.nii.ac.jp/content/cpc/
http://www8.cao.go.jp/cstp/sonota/openscience/
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/036/houkoku/1368803.htm
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t230.pdf
E1681