カレントアウェアネス-E
No.288 2015.09.10
E1705
世界図書館情報会議(WLIC):第81回IFLA年次大会<報告>
2015年8月15日から21日にかけて,世界図書館情報会議(WLIC):第81回国際図書館連盟(IFLA)年次大会(E1214,E1479等参照)が,南アフリカ・ケープタウンの国際コンベンションセンターで開催された。IFLAによれば112か国,合計3,190名の最終参加者があり,日本からも国立国会図書館(NDL)からの代表団6名を含む28名が参加した。なお同国での開催は,2007年のダーバン大会以来,8年ぶり2回目である。
今回の大会は「ダイナミックな図書館:アクセス,発展,変化」をテーマとし,224のセッション,68機関が出展した展示会,132のポスター発表等が行われた。また,大会に合わせて各分科会常任委員会等の役員会が開催されたほか,各分科会等が主催する17のサテライトミーティングが,ケープタウンや南アフリカ各地,近隣諸国で行われた。
16日の開会式は,挨拶・基調講演のほか朗読・歌・ダンス等で大いに盛り上がり,さながらライブ会場のようであった。“Weaving the African story”(アフリカの物語を編む)と題された朗読や歌のステージは,人類発祥の地に集まってきた「子どもたち」である参加者に,故郷アフリカが持つ生命力や力強さをアピールする印象的な構成であった。他方,基調講演は南アフリカのアダム(Rob Adam)博士による電波望遠鏡プロジェクトSKA(Square Kilometre Array)に関するもので,当該プロジェクトの技術革新への貢献(人工知能,ビッグデータの処理)などにわたる興味深い内容であり,歌・ダンス等の「動」に対し「静」を交える形で,開会式に奥行きを与えるものであった。また,18日の夜に行われた「文化の夕べ」でも,歌・演奏・ダンスや,参加者の衣装・フェイスペインティング等でアフリカの文化が披露されたほか,各セッションやポスター発表にも,南アフリカをはじめとするアフリカ各国から積極的な参加があり,エネルギーに満ちた「ダイナミックな」アフリカが実感できた。
16日から20日にかけて開催された各セッションには,日本からも複数の登壇者があった。獨協大学の井上靖代氏が情報へのアクセスと開発の測定をテーマとしたセッションにチェアとして,青山学院大学の小田光宏氏が図書館情報学教育の質的保証をテーマとしたセッションにパネリストとして,東久留米市立第三小学校/筑波大学大学院の松本美智子氏が学校図書館のガイドラインをテーマとしたセッションに発表者(音声のみ)として参加された。そのほか,NDLからも3名がインターネット資料収集保存事業(WARP),図書館向けデジタル化資料送信サービス,国会会議録検索システムについての発表を行った。また,ポスター発表には,鶴見大学から原田智子氏ほか3名が参加された。18日には国立図書館長会議(CDNL)が南アフリカ国立図書館の読書推進機構である「本のセンター」(Centre for the book)で開催され,網野光明NDL副館長が館長代理として出席した。CDNLでは国立図書館とデジタル戦略を主たるテーマとした,英国図書館長及びフランス国立図書館長によるプレゼンテーション並びにパネルディスカッション等が行われた。
19日に行われたIFLA総会では,IFLAの活動報告,財務報告のほか,運営理事会メンバー等の選挙結果について報告された。20日の閉会式では,次回の開催地である米国オハイオ州コロンバスからの歓迎の挨拶に続き,2017年の大会がポーランドのヴロツワフで開催されることが発表された。あわせて,今大会で任期を終えるIFLA会長のシピラ(Sinikka Sipila)氏(フィンランド)の退任挨拶の後,新会長のシーダー(Donna Scheeder)氏(米国)が,自身のテーマを「行動への呼びかけ」(Call to Action)とすると挨拶し,会は閉幕した。
今大会の詳細は『国立国会図書館月報』及び『図書館雑誌』の2015年12月号で報告される予定である。なお,各セッションの予稿はIFLAの機関リポジトリ“IFLA Library”で,大会の写真はFlickrで公開されている。
関西館電子図書館課・村上浩介
Ref:
http://conference.ifla.org/ifla81/
http://library.ifla.org/
https://www.flickr.com/photos/ifla/collections/72157656911097061/
https://www.skatelescope.org
E1214
E1479