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E1479 - シンガポールで「未来の図書館」を考える:IFLA WLIC 2013

カレントアウェアネス-E

No.245 2013.09.26

 

 E1479

シンガポールで「未来の図書館」を考える:IFLA WLIC 2013

 

 世界中の図書館関係者がこれほど多く集まる機会は他にないだろう。公式発表によると,8月17日から23日までシンガポールで開催された2013年国際図書館連盟(IFLA)・世界図書館情報会議(WLIC)年次大会の参加者数は3,750名,国は120か国にものぼったという。「未来の図書館:限りない可能性」というテーマのもと,会期中に行われた会議やセッションは200を超える。会期前後の図書館ツアーやサテライトミーティング,非公式の関連行事も含めると,数えきれない。アジアでの開催は,2006年のソウル大会以来となる。

 筆者は,今年,国立大学図書館協会海外派遣事業および九州大学附属図書館からの助成を得て,この場に足を運んだ。ポスターセッションにて九州大学附属図書館でのeリソースの管理と提供における循環的な仕組みについて発表し,いくつかのセッションに参加した。派遣期間中の様子は,国立大学図書館協会のFacebookページやTwitter(#国大図協派遣)によりリアルタイムで紹介しているので,参照いただきたい。この稿では,筆者が注目したいくつかのトピックを紹介する。

 まずは,ソーシャルメディアとモバイルデバイスの活用である。シンガポールでは,大学やポリテクニック(高等教育機関の一種)が競い合うように各校独自のモバイルサービスを展開していた。シンガポール国立図書館委員会も,子供向けのリテラシー教材や貸出管理のできるモバイルアプリを開発中とのことである。17日に南洋理工大学(Nanyang Technological University:NTU)で開催されたソーシャルメディアワークショップでは,同校の先進的な取組みが紹介され,大いに刺激を受けた。NTUでは,図書館の職員が全員ブログやFacebook,Twitterなど何らかの形で利用者とのコミュニケーションに関わることとし,そのための研修も行っている。ライブラリアンが教員にブログの使い方をアドバイスし,研究成果の発信につなげている例もある。

 Linked Dataも,ここ数年のIFLA大会で話題になってきたキーワードの一つである。Linked Dataに関しては,管理面と利用面で2つの議論の方向性があろう。管理面では,UNIMARCのRDFへのマッピングといった気の長いプロジェクトや,フランス国立図書館のdata.bnf.frなど,既存の図書館目録の蓄積を“expose”(=ウェブで見えやすく)するための基盤整備の報告が多くなされていた。また,目録業務の効率化にもつながるとも説明され,特に国の中心的な図書館が推進することの意義がよく理解できた。利用面では,Linked Dataの利点をユーザに届けるインタフェースの部分で多くの事例が紹介されていた。フランスのポンピドゥーセンターのウェブサイトにおける美術作品の検索や,ユーザの入力した単語を解析してより適切な情報検索へと導く円状のインタフェース(ドイツの事例)が印象深かった。

 IFLAは多くのセクションに分かれて活動を行っているが,新しい課題に関してはそれらのもとにさらにSpecial Interest Groupが設けられている。その一つであるNew Professionals Special Interest Group(NPSIG)は,まさに未来の図書館を担うライブラリアンの国際的なネットワーク形成を目的としたゆるやかな組織で,IFLAの中でも異彩を放っている。会期の前に“IFLAcamp2”というアンカンファレンス(テーマや発表者をあらかじめ決めずにその場で募り,グループで議論したり発表したりする自由な会議形式)を行っていた。通常セッションの枠でNPSIGが提供したワークショップは,テーマ別に4つのグループに分かれ,ファシリテーターの司会で別々のアクティビティを行うという形式であった。私が参加したのは,国際的にキャリアを築くことについて考えるグループで,現在はオーストラリアで働いている米国人ファシリテーターのもと,30名くらいの参加者が,ワークシートや付箋を小道具として用いながら,異文化の中に飛び込んでいく価値や困難について意見を出し合った。海外で働くことは考えたことがなかったので,新鮮な経験であった。

 このIFLAの世界大会は,世界中のライブラリアンの“いま”の活動が体感できる場であり,日本での日々の仕事が世界のあちこちにつながっていることが実感できるまたとない機会である。先のソウル大会で感じた躍動感をもう一度体験したいというのが筆者の参加動機の一つでもあった。オープニングセレモニーや懇親会で開催国のホスピタリティを感じ,参加者同士のネットワークを広げるのも楽しい。来年はフランスのリヨンで開催される。ぜひこの数千人の渦の中に飛び込み,ライブラリアンの一人として,自分の知識や経験を未来につなげてほしいと思う。

(九州大学附属図書館・天野絵里子)

Ref:
http://conference.ifla.org/past/2013/ifla79.htm
http://express.ifla.org/
http://www.janul.jp/j/operations/overseas/
https://www.facebook.com/januloversea
http://twitter.com/search?q=%23%E5%9B%BD%E5%A4%A7%E5%9B%B3%E5%8D%94%E6%B4%BE%E9%81%A3%20%40sabarya&src=typd&mode=realtime
http://infolit.nl.sg/
http://information-literacy.blogspot.jp/2013/08/sure-campaign-of-national-library-board.html
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008719826
http://www.ifla.org/swsig
http://ifla2013satellite.nlb.sg/it/
http://www.ifla.org/it/conferences
http://library.ifla.org/id/eprint/156
http://blogs.ntu.edu.sg/ifla2013/
http://blogs.ntu.edu.sg/
https://www.facebook.com/ntu.library
http://www.ifla.org/new-professionals
http://npsig.wordpress.com/
http://npsig.wordpress.com/iflacamp2/
http://conference.ifla.org/ifla80