カレントアウェアネス-E
No.312 2016.10.06
E1848
世界図書館情報会議(WLIC):第82回IFLA年次大会<報告>
2016年8月13日から19日にかけて,世界図書館情報会議(WLIC):第82回国際図書館連盟(IFLA)年次大会(E1705ほか参照)が,米国のオハイオ州コロンバスのグレーター・コロンバス・コンベンションセンターで開催された。2001年のボストン以来の米国開催であり,世界最大の総合目録であるWorldCatを運営しているOCLCの本拠地ダブリンはコロンバスの隣に位置する。今回の大会には137か国から約3,100名が集い,日本からも国立国会図書館(NDL)からの代表団7名を含む69名が参加した。
「つながり・共同・コミュニティ(Connections. Collaboration. Community.)」をテーマとした今回の大会では,228のセッション,92機関が出展した展示会,203のポスター発表等が行われた。また,大会に合わせて各分科会常任委員会等の役員会が開催されたほか,各分科会等が主催する25のサテライトミーティングが,コロンバス近郊や近隣の州で行われた。
14日の開会式では,オハイオ州に本拠を置く全米プロバスケットボール協会(NBA)のクリーブランド・キャバリアーズ所属アナウンサーであるセドラ(Olivier Sedra)氏の軽妙な司会進行により,オハイオ州の黎明から発展,現在に至るまでが,ファッションショーのランウェイのスタイルで紹介された。これは米国で有数のファッションの街として知られるコロンバスを意識した演出と思われる。さらにオハイオ州出身のライト兄弟やトーマス・エジソン,宇宙飛行士で後に米国議会の上院議員を務めたジョン・グレン氏等の業績を,ビデオを交えた舞台上でのパフォーマンスで紹介し,科学技術発展の地であることも印象付けるプログラムであった。国内委員会の共同議長である,オハイオ州立大学図書館のディードリッヒ(Carol Pitts Diedrichs)氏とコロンバス市立図書館のロシンスキー(Patrick Losinski)氏の挨拶を経て,最後はオハイオ州選出の下院議員ビーティー(Joyce Beatty)氏からビデオレターによる歓迎の辞が述べられた。
14日から18日にかけて各セッションが開催された。日本からは同志社大学の原田隆史氏が,「教育研修分科会」「図書館情報専門職の継続発達,職場での学習分科会」「情報技術分科会」のジョイントセッションで発表されたほか,獨協大学の井上靖代氏,鶴見大学の角田裕之氏ほか4名がポスター発表に参加された。NDLからは計2名が国会に対する調査サービスの向上にむけた取組みと,印刷物を読むことに障害がある人々を対象とした日本の電子図書館サービスについて,それぞれサテライトミーティングで発表を行った。
また今回の大会では,2015年に採択された国際目標「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」に定められた持続可能な開発目標(SDGs;E1763参照)がいくつかのセッションで議題に取り上げられ,図書館がSDGsに対して起こすべき行動について,分科会の枠を超えて話し合われた。
16日には国立図書館長会議(CDNL)がコロンバス美術館で開催され,田中久徳NDL電子情報部長が館長代理として出席した。CDNLではデジタル市場における国立図書館がテーマに取り上げられ,NDLからは,大規模デジタル化事業の取組みと,当該事業の日本のデジタル出版市場への影響について発表し,パネルディスカッションに参加した。
17日に行われたIFLA総会では,IFLAの活動報告,財務報告等が行われた。18日の閉会式では,RDA運営委員会の議長でLinked Dataの分野等で活躍するダンサイア(Gordon Dunsire)氏らがIFLAメダルを受賞したほか,ポスター発表の最優秀賞にカザフスタンの公立図書館が選ばれた。2018年の大会がマレーシアのクアラルンプールで開催されることが発表された後,次回の開催地であるポーランドのヴロツワフから歓迎の挨拶があり,大会は閉幕した。
大会の各セッションの予稿はIFLAの機関リポジトリ“IFLA Library”で,写真はFlickrで公開されている。なお,今大会の詳細は『国立国会図書館月報』の2016年12月号で報告される予定である。
収集書誌部収集・書誌調整課・津田深雪
Ref:
http://2016.ifla.org/
http://library.ifla.org/1550/
http://library.ifla.org/
https://www.flickr.com/photos/ifla/
E1705
E1763