E1847 – 没年調査ソン in 京都 Vol.1<報告>

カレントアウェアネス-E

No.312 2016.10.06

 

 E1847

没年調査ソン in 京都 Vol.1<報告>

 

  2016年9月3日,京都府立図書館の自主学習グループ「ししょまろはん」によるイベント「没年調査ソン in 京都 Vol.1」が,京都府立図書館で開催された。「没年調査ソン」とは,ハッカソンやアイデアソンに倣い,著作者の没年調査とマラソンを掛け合わせた造語であり,著作者の没年調査に関心のある人々が集まり短時間で集中的に図書館の資料等を用いて著作者の没年を調べるイベントを意味する。

   主催者である「ししょまろはん」は京都が出てくる小説やマンガ・ライトノベル等に関するオープンデータである「京都が出てくる本のデータ」の公開等,図書館が蓄積しているデータのオープン化に実験的に取り組んでいる。「ししょまろはん」が今回の「没年調査ソン」を開催した目的は次の2点であった。

  • デジタル化資料の著作者の没年が判明すれば著作権保護期間が明確になり,保護期間の満了後に当該資料のインターネット公開が可能になることを社会にアピールする
  • 今後京都府立図書館が所蔵資料のデジタル化を進めるにあたって,インターネットで公開するためには著作者の没年調査が必要になることから,そのノウハウ作りに役立てる

   また,NDLが没年調査において,大塚節治『回顧七十七年』(同朋舎,1977)等,NDLが所蔵していない資料について京都府立図書館に照会し,没年が判明した例がこれまでいくつかあったことも開催の契機となった。

   参加者は公共図書館や大学図書館の図書館員等の12名であり,当日は,まず「ししょまろはん」代表の是住久美子氏から趣旨説明があった後,NDLで「国立国会図書館デジタルコレクション」等に関するデジタル化資料の著作権処理に携わっている筆者から,NDLでの没年調査の方法を説明した。そして,京都府立図書館の使い方などについて説明があった後,没年調査を行う,という流れで行われた。調査対象は,NDLのデジタル化資料の著作者で没年が不明あるいは没年調査を行っていないものから京都府にゆかりのあるものを選んで主催者が用意した。参加者は,出身地域の人物や,所属機関に関連した人物など,各自の興味関心に基づいて調査する人物を選び,会場に準備された人名辞典等の参考図書類や京都府の地方史誌等を用いる,会場に隣接したマルチメディア閲覧室で新聞データベースを検索する,インターネット上の情報を利用する等,各々の方法で調査を進めていった。また,当日は京都府立総合資料館にも「ししょまろはん」のメンバーが待機し,調査への協力を得た。資料の掲載確認などを行いたいときに会場から電話で連絡して確認してもらうことで,同館の所蔵資料も活用された。

   調査は3時間ほど続いたが,参加者は全員熱心に取り組んでいた。没年が判明したときは,模造紙に著作者の名前と没年,確認した資料などを書き込んでいったが,その都度拍手が起きるなど,終始和やかな雰囲気の中での調査であった。調査の結果,16人の没年と2人の生年が判明し,そのうち著作権保護期間が満了した著作者は2人であると確認できた。参加者からは「もっと続けて調査したかった」「調査は大変だったが,没年を見つけることができたときはとてもうれしかった」等の感想があった。

   没年調査という地道な作業を行う「没年調査ソン」は,同時に調査の楽しさも感じられるものになったのではないかと思う。また,NDLとしても没年調査ソンの成果ややり方を今後に活かすことができそうである。

関西館電子図書館課・佐藤久美子

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