カレントアウェアネス-E
No.286 2015.08.06
E1694
京都府立図書館「宵山に繰り出す前に 浴衣で図書館」報告
京都府立図書館(以下当館)では,祇園祭の特別展示にあわせて,祇園祭・前祭の宵山(2015年7月16日)にカウンターの職員が浴衣で応対し,利用者へも浴衣での来館を呼びかける「宵山に繰り出す前に 浴衣で図書館」という企画を実施した。
当館では,ガラスケース内に珍しい資料等を入れて展示し,隣接する書架に関連図書を紹介するという特別展示を年4回行っている。昨年,山鉾巡行の「前祭」と「後祭」が復活したこともあり,今回,祇園祭の特別展示を11年ぶりに実施することにした。
9月23日まで開催しているこの展示では,1879年,ドイツ帝国の王子の来京にあわせ,全ての山鉾が京都御苑に参入した時の様子が掲載された祇園祭山鉾連合会編集『祇園祭 写真記録』等を紹介している。また,当館の対面朗読ボランティアの方から,精巧につくられた山鉾の模型5基をお借りして展示し,小さいながらも,華やかな展示となっている。
関連図書として,50点以上の資料を集めた。祇園祭の歴史や美術関連資料は勿論,祇園祭は鱧(はも)祭とも言われるため,食文化に関連する資料も含まれている。中でも目を引くのが,祇園祭染織研究会編の『祇園祭染織名品集 上・下』だろうか。貸出を行っていない資料なので,ぜひご来館の上,手にとってご覧いただきたい。
この特別展示にあわせた「宵山に繰り出す前に 浴衣で図書館」という企画は,京都の伝統産業である和装産業の振興に資するとともに,図書館により親しんでいただく機会になるのではないかと考え実施した。
京都という土地柄,祇園祭だけではなく,五山の送り火や地蔵盆など浴衣を着る機会は多いこともあり,浴衣を持っている職員や利用者も多い。当日の浴衣の着衣が可能な職員でカウンターシフトを調整した結果,当館3か所のカウンターで浴衣姿での応対を実現した。また,浴衣での動きを考慮し,図書の運搬などに対応する職員は,別に配置した。
写真1 当日のカウンター
浴衣での来館者へは,京都市立芸術大学の学生が当館のためにデザインしたオリジナルブックカバーを進呈することとした。
広報用のチラシやポスターには,著作物の再利用を許可するという意思表示がされたクリエイティブコモンズの写真を活用して作成した。出来上がったチラシやポスターは,当館のホームページに掲載するとともに,地下鉄の駅や当館の立地する岡崎地域の施設に掲示していただいた。広報の結果,利用者から宵山の日に当館を訪れることを楽しみにしているという声もいただいた。
写真2 オリジナルブックカバーなど
この企画については,京都新聞社から前日に取材があり,当日の朝刊に記事が掲載された。当日は,台風11号の影響が懸念されたが,新聞記事を読んで来たという利用者もいらっしゃり,カウンターでは浴衣をきっかけとした会話も生まれ,普段以上の交流を図ることができた。また,前祭の日は,KBS京都ラジオの取材を受け,今回の「宵山に繰り出す前に 浴衣で図書館」の企画や,特別展示の内容などについて,当館から生放送していただくことができた。
様々なメディアに取り上げていただき,普段来館されない府民に対しても,当館の活動について興味を持っていただく良い機会になったのではないだろうか。
今後も,当館の魅力について,府民に関心を持っていただけるような形で発信し,さらに親しみを感じてもらえる展示や企画を考えていきたい。
京都府立図書館・酒井直子
写真3 宵山の前に,待ち合わせでご来館 写真4 朝のカウンターの職員
Ref:
http://www.library.pref.kyoto.jp/news.html#yukata201507
http://www.library.pref.kyoto.jp/kpref_event.html#tenji20150526gionmatsuri
http://www.library.pref.kyoto.jp/news.html#yukataradio2015
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20150716000032
http://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/para/archives/002_radiocar/