E1427 – 米国教員の情報行動に関する定期調査報告

カレントアウェアネス-E

No.236 2013.04.25

 

 E1427

米国教員の情報行動に関する定期調査報告

 

 2013年4月4日,米国のITHAKA S+Rが,米国高等教育機関の教員の研究・教育・コミュニケーションに対する姿勢・実践に関する第5回定期調査の結果を公表した。ITHAKA S+Rは,学術団体の研究成果保存のためのデジタル技術使用を支援する米国の非営利団体ITHAKAの調査研究部門である。ITHAKA S+Rによる定期調査は2000年に開始されて以来,3年ごとに実施されており,今回の調査は2012年秋に行われ,無作為に選ばれた教員から5,261の回答を得たものである。今回の調査では,図書館,出版社,学術団体理事により構成された諮問会議のアドバイスを得て,近年注目を集めるトピックを含んだ質問項目への改定が行われた。また,従来の紙ベースでの調査からオンライン調査へと手法が変更された。本稿では今回の調査の中でも特に,図書館に関する結果について主な点を取り上げる。

 近年では多くの図書館が,ディスカバリサービスに移行している(CA1772, E1319参照)。今回の調査では,前回の調査までにみられた図書館のオンライン蔵書目録から学術文献検索を始める回答者の減少傾向が止まり,その数値はわずかに増加した。特定の主題データベース,一般的検索エンジンに次ぐ,3番目の順位である点は,前回と変わっていない。この傾向は,主に人文科学系研究者の行動変化によるものである。図書館のウェブサイトから検索を始めると回答した人文科学系研究者の割合は,社会科学系研究者より多く,自然科学系研究者の約2倍であった。報告書ではその理由について,図書館のディスカバリサービスへの移行にあるのではないかとしている。

 研究者による研究資料の利用が,資料の電子化に伴いどのように変化しているかの調査も行われた。図書館で雑誌の最新号が電子資料で利用できるなら冊子体の購入を停止してもよいとした回答者数は,毎回増加してきていたが,2012年調査では,依然として数値は高いものの初めて減少に転じた。

 教員の研究者としての役割と同様に,教育者としての役割も重要である。約40%の回答者が,学部生のリサーチスキルを向上させる責任は自分にあるとし,図書館に責任があるとした回答者は,約20%であった。一方,約45%の回答者が,図書館員は学部生のリサーチスキルの向上を助けているとし,多数の回答者は,図書館が授業に必要な資料を見つける手助けをして学部生の学習に貢献していると回答している。どちらの項目も,強く同意する回答者の割合は,人文科学系研究者よりも自然科学系研究者の方が大幅に少なかった。この結果は,図書館サービスと自然科学系の学部生のニーズが合致していない重要な問題を提起していると報告書は述べている。

 今回の調査では,教員の情報行動において図書館が果たす役割を6つに分類し,それぞれの役割を重要に感じる度合いを質問している。調査結果報告では,これら6つの役割を図書館のコレクションに関する役割と,図書館サービスに関する役割の2つに分けて,分析を行っている。

 図書館のコレクションに関する役割には,「ゲートウェイ」,「バイヤー」,「アーカイブ」の3つの役割があげられている。「バイヤー」の役割を重要視する回答者の割合は約80%と最も多かったが,前回調査よりも,その数値は約10%減少している。この減少は,無料で公開されている文献の増加によるものではないかと推測されている。また,「アーカイブ」の役割を重要視する回答者の割合も減少したが,「ゲートウェイ」としての役割に関しては,重要視する回答者の割合が前回の調査よりも若干増加した。

 図書館サービスに関する役割には,「教育活動サポート」,「研究活動サポート」,「学部生への学習サポート」の3つがあげられている。これら3つの役割を重要とする回答者の割合は,図書館のコレクションに関する3つの役割を重要視する回答者の割合よりも少なかった。この結果は,2010年にITHAKA S+Rが行った図書館長等に対する調査(E1175参照)で,事実上全ての図書館長がこの役割を重要とした結果と,大きく異なっている。

 調査結果を教員の学問分野から分析すると,3分の2以上の人文科学系研究者が,「研究活動サポート」を除く5つの項目をとても重要であると回答している。図書館の役割を重要だと感じる自然科学系研究者の割合は,人文科学系研究者よりも少ないが,「バイヤー」の役割を重要と評価する割合のみ,人文科学系研究者,社会科学系研究者の数値とほぼ同じで,約80%となっている。

 この調査結果が高等教育部門へ戦略的課題を示し,議論をもたらすことを期待すると,ITHAKA S+Rは報告を締めくくっている。

(関西館図書館協力課・安原通代)

Ref:
http://www.sr.ithaka.org/research-publications/faculty-survey-2012-us
http://www.sr.ithaka.org/news/ithaka-sr-2012-us-faculty-survey-now-available
http://lj.libraryjournal.com/2013/04/academic-libraries/ithaka-survey-humanities-faculty-love-the-library-scientists-less-enthusiastic/
CA1772
E1175
E1319