カレントアウェアネス-E

No.194 2011.06.09

 E1178

ニューヨーク公共図書館の中央館が開館100周年を迎える

　19世紀以来の伝統を持つ米国のニューヨーク公共図書館（NYPL）は，現在，90館以上の研究図書館や分館からなる図書館ネットワークを形成するまでに成長している。このネットワークの中央館である「スティーブン・A・シュワルツマン図書館」（Stephen A. Schwarzman Building）が，2011年5月23日に開館100周年を迎えたのにあわせ，同館では5月21日から5月22日にかけて記念イベントが開催された。以下では，中央館の100年の歴史の一部と記念イベントについて紹介する。

　1899年の建設計画から開館までに12年を要した中央館は，開館当初，それまでの米国の大理石建造物としては最大のものであった。開館当日は5万人が詰めかけ，当時としてはスピーディに7分で書庫から出納された最初の図書は，グロート（Nikolai I. Grot）による『現代における倫理的理想』（“Nravstvennye idealy nashego vremeni”）であったという。1929年の世界恐慌は同館の歴史上最も活発な時期にあたり，中央閲覧室には毎日800人から1,000人が訪れ満席であった。また，1941年の真珠湾攻撃後には，12,000点のコレクションを同館から250マイル（約400km）離れた秘密の場所へ避難させていたという。2008年の大改革の際には，同館に対して1億ドルという多額の寄付を行った人物の名にちなみ，中央館は「スティーブン・A・シュワルツマン図書館」とその名を変えている。

　プレイベントとして，5月19日に開館100周年記念図書“Know the Past, Find the Future: The New York Public Library at 100”の朗読が，発行元のペンギン・ブックス社の社長や俳優，歌手らによって行われた。この100周年記念図書はニューヨーク市だけでなく世界各国の著名人計100名以上がNYPLのコレクションの中からお気に入りを選び，それについてまとめたエッセイを収録したものである。同書はこのプレイベントで地下鉄やバス，近隣図書館等で無料配布された。

　イベント本番の5月21日には，館内・書庫見学ツアーや，同館とともに100歳を迎えた同館のシンボルである1対のライオン像“Patience”と“Fortitude”のレゴ製レプリカのお披露目，同館提供のオンライン資料を用いて行われたニューヨーク市の歴史研究のワークショップ，地図コレクションをウェブ上にマッピングする講習会，10代向けにはコミック作家とのイベントやマジックショー等が行われた。そして22日には，見学ツアーの他に，ニューヨーク市のストーリーテリング・センターの担当者による大規模なお話し会や，先述の100周年記念図書の執筆者が同館コレクションのお気に入りについて議論するディスカッションイベント，記念イベントに先立って同館を会場に夜間に行われたゲームイベントに関する講演等が開かれた。

　同館は上記のイベントのほかにも，100周年記念展示会“Celebrating 100 Years”を12月31日まで開催したり，コレクションを閲覧できるiPad用アプリ“Biblion”や記念イベントサイト“Find the Future”での利用者参加型のバーチャル展示を公開したりしている。

Ref:
http://exhibitions.nypl.org/100/
http://www.nypl.org/press/press-release/2012/01/01/new-york-public-library-opens-its-doors-and-its-stacks-celebrate-100t
http://nypl.tumblr.com/post/5697693668/come-see-the-lego-lions-one-weekend-only
http://nypl.tumblr.com/post/5668676756/happy-birthday-patience-and-fortitude
http://www.npr.org/2011/05/23/136582351/ny-public-library-celebrates-100-years-of-open-doors
http://www.chicagotribune.com/features/tribu/lat-trb-new-york-public-library-100-years-20110415,0,372303.photogallery