カレントアウェアネス-E
No.191 2011.04.07
E1163
英国図書館,2011-2015年の戦略を公表
英国図書館(BL)は,2011年2月に,2011-2015年の戦略「知識を成長させる」(Growing Knowledge)を公表した(E852参照)。2010年9月に公表された「2020年ビジョン」(E1104参照)の内容に基づき,2015年までの優先的取組み事項等を定めたものである。
戦略文書では,まず,BLを取り巻く現状について,デジタル革命や情報社会への移行,経済成長を支える研究活動への政府の支援,研究活動における協同の増加や産学連携の動き,モバイル機器でのサービスへの需要の高まり等を指摘し,こうした状況はBLにとって好機であるが,予算が減少していく中でこれらの変化に対応するためには,重要な活動に力点を絞る必要があるとしている。
具体的な戦略については,「2020年ビジョン」で示された5つの戦略的優先事項にそって,目的と行動が示されている。
1つ目の「将来世代のアクセスを保証する」に関しては,ボーンデジタルのコンテンツの収集の実施,資料の蓄積と保存のための電子図書館インフラの開発と活用,2013年のボストンスパでの新聞保存施設の開設(E1010参照),印刷資料の長期的管理の継続,他の大規模図書館との共同資料管理等の目的・行動が挙げられている。
2つ目の「研究を望む者は誰でもアクセスできるようにする」に関しては,パブリックドメイン資料の提供について,デジタル化には公共と民間の両方が関わることや,大部分の資料は2020年までにはデジタル化されず当面はデジタルと印刷物の両方での提供になるとしている。そして,具体的な行動としては,2,000万ページの新聞資料のデジタル化や,それとは別の大規模デジタル化を実施すること等が挙げられている。さらに,利用者の情報を把握することでよりよいサービスを提供することや,モバイル機器への対応等も挙げられている。
3つ目の「社会的・経済的利益に関わる研究コミュニティを支援する」に関しては,BLのビジネス・知的財産センター(E1028参照)による小規模ビジネス支援の継続等が挙げられている。
4つ目の「国民の文化生活を豊かにする」に関しては,BLのウェブサイトの改善,公開イベント等の開催,オンラインでの展示等の目的・行動が挙げられている。また,利用者の関与によりコンテンツを充実させる試験的取組みにも言及している。
5つ目の「世界の知識基盤の成長を先導し協調する」に関しては,デジタル化についての出版社や権利者とのパートナーシップ,技術的発展についての技術会社との協働,高等教育機関との共同資料管理によるコスト削減,さらにはインド・カタール・中国等との国際的な提携等,他機関等との提携に関する取組みが多く挙げられている。
組織や財政については,リーダーシップ能力・専門スキル(特にデジタル関連)・プロジェクトマネジメントスキルの育成に取り組むことや,収入を産む既存のサービスの見直しやBLブランドのライセンシング等による収入源の多様化に取り組むとしている。
Ref:
http://www.bl.uk/aboutus/stratpolprog/strategy1115/strategy1115.pdf
http://portico.bl.uk/aboutus/stratpolprog/strategy1115/index.html
http://pressandpolicy.bl.uk/Press-Releases/Growing-Knowledge-The-British-Library-launches-its-strategy-for-2011-2015-4b3.aspx
E852
E1010
E1028
E1104