E1010 – 英国図書館の新書庫が公式オープン

カレントアウェアネス-E

No.164 2010.01.20

 

 E1010

英国図書館の新書庫が公式オープン

 2009年12月,英国ウェストヨークシャー州ボストンスパに建設された英国図書館(BL)の新書庫(Additional Storage Building:ASB)が,正式オープンした。なお,ボストンスパはBLが40年以上に渡り,ドキュメントサプライセンター(BLDSC)を運営してきた地である。

 2,600万ポンド(約38億円)を投じたASBは,最先端の技術を駆使した,総延長262キロメートルの施設となっている。新書庫の建設は2006年に発表され,BLの戦略計画(2008~2011年;E852参照)では,優先事項「物理的コレクションの保管と保存を統合する」の達成に当たって重要な役割を果たすものとして位置づけられていた。

 ASBに収蔵されるのは,特許明細書,書籍,雑誌,新聞のうち,利用頻度の低いものである。現在はロンドンの複数の賃貸施設で管理されている資料を整理し,今後2年間で,利用頻度の低いものがボストンスパのASBへ,利用頻度の高いものがロンドン・セントパンクラスのBL本館へ移送される。移送は,毎日400メートル分の資料が扱われる大規模な事業となっており,この過程で,ASBに総延長180キロメートル分の資料が移される(なお,BL本館の書庫の総延長は約650キロメートル)。余った空間は今後10年間の資料増加に備えることになっており,最終的には書庫全体で700万点の資料を収蔵する予定である。

 ASBの書庫内環境,資料出納の仕組みは次の通りである。書庫内の湿度・温度環境は,記録文書保存のための国際基準を満たすよう保たれており,さらに,火災の脅威からコレクションを守るため,低酸素の状態になっている。書庫は自動化されており,資料は14万以上のバーコード付きコンテナに収められ,7台のロボットクレーンがコンテナの出納を行う。取り出されたコンテナは,図書館スタッフの作業スペースに送られ,図書館スタッフはコンテナから要求のあった資料を取り出し,BL本館の閲覧室へと送る。資料の請求から利用までにかかる時間は,48時間以内となっている。

 BLは,新聞の保存施設をボストンスパに建設する計画も立てている。ASBや新聞保存施設は70年に及ぶBLのボストンスパ開発基本計画の一部であり,英国の知的遺産を将来に伝えるという目的のため,BLは今後も長期的な投資を継続していくとのことである。BLによるボストンスパの開発事業は,地域の雇用促進にも一役買っており,こうした観点からも今後の展開に期待が寄せられている。

Ref:
http://www.bl.uk/news/2009/pressrelease20091203a.html
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/west_yorkshire/8393248.stm
http://www.yorkshireeveningpost.co.uk/news/Leeds-British-Library-unveils-new.5882827.jp
E852