カレントアウェアネス-E
No.164 2010.01.20
E1011
メタデータ語彙のオントロジー,VMFのアルファ版がリリース
“Vocabulary Mapping Framework”(VMF)のアルファ版が,2009年12月17日にリリースされた(なお,同月23日にはファイルの一部のエンコードを修正したバージョン1.002がリリースされている)。リリースに先行して2009年12月12日には,概要と技術仕様を記述したイントロダクションも公開されている。
VMFはメタデータ語彙のオントロジー(CA1598参照)であり,メタデータスキーマ間の自動的なマッピングの実現を目標としている。メタデータの相互運用性の向上を目指し,英国情報システム合同委員会(JISC),スコットランドのストラトクライド大学などがこのプロジェクトに取り組んでいる。
イントロダクションによると,VMFでは,異なるスキーマの要素同士を直接マッピングする方法ではなく,各スキーマの要素を中心となる「VMFマトリックス」にマッピングし,これによって要素間を関連付けるハブアンドスポーク方式を採用しており,具体的には次のような形となる。
- (1) ハブとなる,階層化されたVMFマトリックスを作成する。これは,動詞概念(verb concept)を起点とした概念集合(concept family)に含まれるクラス(class)や関係子(relator)の要素間の階層構造を,RDFやRDFS,OWLの仕様に従って記述したオントロジーである。
- (2) 作成されたVMFマトリックス上の要素に,複数のスキーマの要素をマッピングする。
- (3) (1),(2)によりVMFの要素にマッピングされた異なるスキーマの要素同士が,VMFマトリックスのツリーを辿ることによって関連付けられる。この際,階層構造を利用するため,マッピングされているVMFの要素間にレベルのずれがあっても,最も適合していると考えられるマッピングを,SPARQL等のRDFクエリ言語を使うことによって自動的に割り出すことができるとしている。
バージョン1.000では,VMFの928の概念集合を含み,CIDOC CRM,DCMI,DDEX,FRAD,FRBR,IDF,LOM(IEEE), MARC21,MPEG21,RDD,ONIX,RDAといった外部のスキーマから,対象とした824の要素がマッピングされており,これらの要素のマッピングでは特に大きな問題は生じていないとしている。
今後の課題としては,英国図書館(BL)で行われたVMFのカンファレンスで,マッピングの拡大を始めとした技術的作業と,プロジェクトの維持管理が挙げられている。
(関西館電子図書館課・中嶋晋平)