E1028 – 英国図書館ビジネス・知的財産センター,活動実績を報告

カレントアウェアネス-E

No.167 2010.03.10

 

 E1028

英国図書館ビジネス・知的財産センター,活動実績を報告

 

 英国図書館(BL)のビジネス・知的財産センター(Business & IP Centre;以下「センター」)は,2010年2月18日,センターの2007年4月から2009年3月までの2年間の活動実績をまとめた報告書を公開した。2006年3月に開設されたセンターは,ロンドン開発庁(London Development Agency)から340万ポンド(約4億7千万円)の資金提供を受け,BLの建物内で,中小企業や起業家・発明家のビジネスの立ち上げ・運営のための支援サービスを行っている( E464参照)。BLの所蔵する資料やデータベースを用い,資金調達,市場調査,会社情報,特許情報等に関する様々な情報を無料で提供しているほか,専門家を招いた相談会やワークショップ等も開催している。以下に報告書の概要を紹介する。

 センターは,ビジネス立ち上げに困難を伴うことが多いとされる,女性,人種的マイノリティ,障害者の利用を促進しており,利用者に占める比率は,それぞれ,50%,37%,4%となっている。年齢層は,25-34歳が35%,35-44歳が27%を占めた。利用者の49%はこれからビジネスを始めようとしている人で,39%は既に事業を開始している人であった。ビジネスの分野別では「創作・メディア・出版」が22%で最多であり,報告書は,この分野での知的財産に関する知識の重要性を指摘している。

 提供されるサービスは,アイデアの着想から具体化,市場展開まで,ビジネスの各段階に応じたものとなっている。ロンドン中心部という立地もあり,起業家同士が交流する場としての役割も果たしている。この2年間で7万人以上がセンターを利用し,月平均で約2,300の問い合わせがあった。官民のパートナー機関と提携したワークショップが950回,個別の相談会が750回開催された。成功した起業家を招いた講演会等のイベントも開催され,多くの参加者を集めた。知的財産入門のオンライン講座も開設されており,その利用の40%は英国外からである。

 利用者がセンターを知ったのは「口コミ」が24%で最も多くなっている。センターは,150以上のパートナー機関を通じて広報に努めており,商工会議所,大学,公共図書館等とも連携している。インターネット上の広報活動では,ウェブサイトに加えてブログやYouTubeも活用している。また,新聞記事に取り上げられるよう,Financial Times等の全国紙や,地方紙・専門紙と関係を結んでいる。

 センターの経済的効果の推計では,センターのサービスを利用して829の新ビジネスが開始され,3,200万ポンド(約44億円)の売上高の増加をもたらし,それにより550万ポンド(約7億5千万円)が納税されることになったとしている。報告書は,ロンドン経済に活力を与える新規ビジネスの支援にセンターが貢献しているとし,このサービスをモデルとした同種の活動を英国全土へ展開することを提案している。

 報告書が公表された一週間後には,British Telecom社,Google社等が実施する,企業に対する無料のウェブサイト開設サービスにセンターが協力することが発表された。報告書でもデジタル化する経済社会への対応が不可欠になるとされており,今後はデジタル技術に関連したビジネス支援が強化されていくものと思われる。

Ref:
http://www.bl.uk/news/2010/pressrelease20100218.html
http://www.bl.uk/bipc/evaluation
http://www.bl.uk/bipc
http://www.bl.uk/news/2010/pressrelease20100225a.html
E464