E1027 – OCLC,閲覧室でのデジタルカメラの使用に関する報告書を発表

カレントアウェアネス-E

No.167 2010.03.10

 

 E1027

OCLC,閲覧室でのデジタルカメラの使用に関する報告書を発表

 

 OCLCは2010年2月,特別資料閲覧室でのデジタルカメラの使用をテーマにした報告書“Capture and Release: Digital Cameras in the Reading Room”を発表した。この報告書は,大学図書館,研究図書館,公文書館,公共図書館,歴史学会等を含む35の資料保存機関(repository)の複写サービス提供方針等を調査し,閲覧室でのデジタルカメラの使用について,推奨する実践例を示すものである。

 閲覧室でのデジタルカメラの使用がもたらす利点について報告書は,「コピー機よりも資料への負担が少ない」「資料保存機関の利用を促進する」「時間・手間・費用を節約し,より多くの資料の複写物を入手できるといった点で,研究者の満足度を高める」「スタッフの作業量を軽減する」「貸出にかかる時間を節約し,盗難の可能性を軽減する」「資料保存機関が著作権侵害に関する法的責任を問われるリスクを軽減する」などを挙げている。

 これらの利点を確認した上で,35の施設の複写方針や実践を分析した結果として,デジタルカメラ使用方針に含まれうる要素を抽出している。これらはさらに,項目別,撮影への寛容度別に整理した表にまとめられている。この表を参照し,目的やニーズに合わせて必要な要素を選択し,組み合わせることによって,資料保存機関は各自のデジタルカメラの使用方針の作成や各機関での実践に役立てることができる。

 現在最も一般的で,共有されている要素の例としては,「慎重に扱うべき  資料と著作権保護期間中の資料の画像は,学習,教育,研究といった目的でのみ利用すること,著作権法に則って利用すること,に同意することをデジタルカメラ利用者に求める」「撮影の前にスタッフが資料を確認する」「資料とその所蔵機関を特定できるよう,目印となるもの(カード等)と一緒に撮影する」「フラッシュの使用は禁止する」などがある。

 報告書は結論として,次のように述べている。デジタルカメラのような新しい技術は,資料保存機関にとっての脅威として,誤って受け取られることがある。しかしむしろこうした技術は,資料保存施設の最も根本的な目的,すなわち,コレクション資料の状態を改善すること,経済的・効果的に研究を促進すること,スタッフの生産性を最大化すること等に照らして考えるべきものである。こうした考え方を,デジタルカメラ使用方針に適用することによって,次の世代にデジタルカメラに取って代わるであろう技術を客観的に評価する態勢ができる。

 結論の内容だけでなく,こうした見解を,大学図書館や研究図書館の関係者を中心としたワーキングループが示している点も注目される。

Ref:
http://www.oclc.org/research/news/2010-02-23.htm
http://www.oclc.org/research/publications/library/2010/2010-05.pdf