E1104 – 英国図書館,今後10年の方針を示す「2020年ビジョン」を発表

カレントアウェアネス-E

No.180 2010.10.07

 

 E1104

 英国図書館,今後10年の方針を示す「2020年ビジョン」を発表

 

 2010年9月17日,英国図書館(BL)は,今後10年間の方針等を示した文書「2020年ビジョン」(2020 Vision)を発表した。情報,メディア,出版等の分野の専門家の見解に基づく今後10年間の動向予測を踏まえ,世界の情報ネットワークのハブであり続けるための方針が示されている。

 文書では,「世界の知識を前進させる」(Advancing the world’s knowledge)というミッションと、「2020年に英国図書館は世界の情報ネットワークの先駆的ハブとなり,所蔵資料・専門性・連携を通じ,経済・社会・文化のために知識を前進させる」というビジョンが掲げられており,このビジョンをサポートするものとして,戦略的優先事項を定めた5つの中心的テーマと,それに沿った行動計画が示されている。

 テーマの1つ目は「将来世代のアクセスを保証する」である。2020年には出版物の75%はデジタル版のみでの出版か紙とデジタルの両方での出版となると予測し,デジタル資料の保存に向けた取組みを列記している。2つ目のテーマは「研究を望む者は誰でもアクセスできるようにする」で,デジタル化事業においてパブリックドメインの資料のデジタル化に注力するとしている。3つ目のテーマの「社会的・経済的利益に関わる研究コミュニティを支援する」では,社会への成果還元が目に見えるような分野において,研究者の個別のニーズに応じた支援を行うことが挙げられている。4つ目のテーマ「国民の文化生活を豊かにする」では生涯学習等での活用のための資料提供やその利用促進のためのパートナーシップ形成が,5つ目のテーマ「世界の知識基盤の成長を先導し協調する」では国際的な場での先導的な役割を果たすこと等が挙げられている。

 最後に,厳しい財政状況の中でこれらのビジョンを実現するために,優先度を明確にし,限られた人的・財政的資源を効果的・効率的に割り当てることが必要であるとしている。その具体策として,スタッフのスキルの向上,他機関とのパートナーシップ,業務運営の効率化,ライセンシングや利用者向けのデジタル保存等の商業サービスの導入等が挙げられている。

 “2020 Vision”のウェブサイトには,専門家へのインタビュー結果をまとめたものも掲載されており,技術,出版,知的財産,学習,高等教育,研究,研究者の行動,図書館等の分野における2020年の状況についての予測を見ることができる。

Ref:
http://www.bl.uk/news/2010/pressrelease20100917a.html
http://www.bl.uk/2020vision
http://www.bl.uk/aboutus/stratpolprog/2020vision/summaryofnterviewswithexperts2.pdf