E852 – BL,新たな図書館戦略(2008~2011年)を公表

カレントアウェアネス-E

No.138 2008.10.29

 

 E852

BL,新たな図書館戦略(2008~2011年)を公表

 

 英国図書館(BL)は2008年10月15日,2008年から2011年までの3か年に関する新たな戦略(以下,「新たな戦略」と略)を公表した。

 BLは2005年に,2008年までの戦略「図書館を再定義する」を公表し,デジタル情報資源の収集・保存・提供活動を強化していくことを明確にした(E349参照)。この戦略に基づきBLは,ビジネス・知的所有権センターの設立,自然科学・工学・医学(STM)関係資料の整備に向けた戦略作成と実施,情報システム合同委員会(JISC)などとの協同による音声資料や新聞のデジタル化(CA1577E710参照),BLの文献供給センター(BLDSC)が設置されているボストンスパ地区への新たな書庫の建設,蔵書目録や電子情報などBLが提供しているの情報資源の検索ツール一本化,などの事業をこれまでに展開してきた。「新たな戦略」は,この2005年から2008年までの3か年戦略「図書館を再定義する」をベースとして策定されたものである。

 具体的な内容として,7項目にわたるテーマが「戦略的優先事項」として位置づけられている。具体的には,(1)英国の電子出版物を広範囲に収集・保存する,(2)利用者をコンテンツと結びつける,(3)新聞の利用と保存のありかたを変更する,(4)各種機関や組織と連携して,革新的なサービスと一本化されたプロセスを導入し,英国の研究活動を支援する(E590参照),(5)デジタル図書館システムなどの電子的基盤を構築する(E832参照),(6)現物資料の保管と保存を統合して実現する,(7)BLの組織としての発展を図る,の7項目である。

 各戦略的優先事項のもとには,その主要目的と2011年までに達成すべき目標が,それぞれ掲げられている。たとえば(1)では,「オフラインのデジタル資料,電子ジャーナル,公になっているウェブコンテンツの継続的収集」「他のデジタル・フォーマットへの収集対象の拡大(新聞,地図,電子書籍,アクセス制限のあるウェブサイト,音声資料)」,「電子資料の法定納本に関する状況の,世界的水準との比較評価」の3点が主要目的とされている。また2011年までに達成すべき目標として,「公になっているウェブサイトや電子出版物を収集・所蔵・保存するための場を準備する」,「電子出版物の収集方法決定を図るべく,法定納本審議会をの場を通じて,文化・メディア・スポーツ大臣に最善の情報を伝達する」,「規則が未整備,あるいは不十分な状態である領域に,自発的な枠組みを導入する」,「他国におけるデジタルコンテンツ収集の事例を調査し,ベストプラクティスを確立する」,「収集・保管・アクセスの各運営過程を一元化する」の5点が列挙されている。

 ブリンドリー(Lynne Brindley)館長はこの「新たな戦略」について,BLが今現在もつ長所をどのように発展させ,研究者や産業界に対する新たな事業を展開するチャンスをどのように獲得するかを概観したものである,と述べる。また研究者や産業界に対するサービスのほか,一般向け公開講座や教育プログラム,文化事業も,BLの施設やインターネット経由で引き続き提供していく方針も明らかにしている。

Ref:
http://www.bl.uk/news/2008/pressrelease20081015.html
http://www.bl.uk/aboutus/stratpolprog/strategy0811/strategy2008-2011.pdf
CA1577
E349
E590
E710
E832