E1044 – 国際標準テキストコード(ISTC)を利用するメリットとは

カレントアウェアネス-E

No.170 2010.04.28

 

 E1044

国際標準テキストコード(ISTC)を利用するメリットとは

 

 2010年3月26日,米国の書籍産業研究グループ(Book Industry Study Group)と英国の書籍産業コミュニケーション(Book Industry Communication)が共同で,ISO 21047:2009「国際標準テキストコード」(International Standard Text Code:ISTC)に関するディスカッションペーパー“The International Standard Text Code: A Work in Progress”を発行した。ISTCは,国際標準化機構(ISO)が2009年3月に策定した,著作物に関する新しい識別子である。このディスカッションペーパーには,ISTCへの理解を深めるべく,その概要や利用するメリット等が記されている。

 ISTCは,ハイフンあるいはスペースで区切られた4つの構成要素から成る16桁の文字列(例:ISTC 0A9-2002-12B4A105-7)である。国際標準図書番号(ISBN)が,出版されるフォーマットごとに固有の識別番号を与えるのに対して,ISTCは創作的・知的作品をテキストで表現した「文字著作」(textual work)という単位で識別するものと説明されている。ハードカバーやペーパーバック,PDF形式,Kindle形式などフォーマットあるいは体現形(manifestation)ごとにISBNが付与される場合でも,基となる文字著作が同じであればISTCは1つとなる。ISTCは登録制によって管理されており,その取りまとめは,「国際ISTC機関」(International ISTC Agency)によって行われている。同機関は,各登録管理機関に対して,識別コードの配分管理を認可するほか,ユーザーマニュアルを始めとした実践サポートのための文書を発行している。

 ディスカッションペーパーでは,ISTCを利用することは,著者や出版社,書店,図書館といった多くの書籍産業の関係者にメリットがあるとされている。主なものとして,以下の5つが挙げられている。

  • メタデータに,リンクづけられたISTCを含めることで,検索結果から,探している文字著作のフォーマットが異なるものや,タイトルが異なるものを見つけることができるようになる。
  • 図書館で需要が見込まれる,フォーマットごとの統合的なデータを,ISTCをキーにすることにより取得することができる。例えば,同じ文字著作の,電子書籍リーダーと携帯端末での貸出状況の違いを調べることができる。
  • 各種権利は体現形ではなく文字著作に内在するため,ISTCを用いることで,商用利用可能な体現形(翻訳版や異タイトル版など)を識別し,文字著作の権利を管理することができる。
  • 米国議会図書館(LC)や英国図書館(BL),OCLCなどが用いている「統一タイトルコントロール」(Uniform title control)よりも,原理的には正確で有効な結果を提供することができる。図書館でのコレクション管理において,装丁や出版者が異なる場合など,文字著作単位の重複発注を避けることができる。
  • 出版社等が用いているONIXフォーマットのデータでは出版物の情報がISBNレベルで識別されているため,余分な管理コストや非効率を生みだす原因となっている。ISTCを活用することで,文字著作単位で情報を管理し,それらの問題を解決することができる。

Ref:
http://www.bisg.org/contentweb/wp-content/uploads/istc_paper.pdf
http://www.bisg.org/news-5-544-bisg-and-bic-co-publish-discussion-paper-on-the-international-standard-text-code-istc.php
http://www.istc-international.org/index.php?ci_id=1817