英・ケンブリッジ大学のOffice of Scholarly Communicationによるブログ“Unlocking Research”に、2021年9月24日付けで、同大学図書館のDominic Dixon氏による投稿が掲載されています。この投稿では、ケンブリッジ大学の研究者によるElsevier社出版物の利用状況に関するデータへのアクセス、理解、分析を行う図書館のデータ分析ワーキンググループの取り組みについて述べられています。
ケンブリッジ大学の研究者がElsevier社のジャーナルで発表した論文のプロファイルの作成に際しては、Dimensions、Scopus、Web of Science(WoS)の3つのプラットフォームが比較されました。結果、Dimensionsが2015年から2020年の間のケンブリッジ大学の研究者によるElsevier社のジャーナル掲載論文を最も多くカバーしていることから、調査ではDimensionsを使用されています。
Dimensionsから抽出された58,908報の論文のうち19%に相当する11,431件がElsevier社のジャーナルに掲載されているものであり、Elsevier社はケンブリッジ大学の著者が最も頻繁に出版している出版社であることが判明しました。また、責任著者(corresponding author)に絞ると、34%を超える4,564件がElsevier社で出版されていることがわかりました。
Elsevier社の購読ジャーナル掲載論文のケンブリッジ大学における閲覧状況については、COUNTERと同館の図書館管理システム(Alma)から2015年から2020年の間の使用状況のデータを収集して分析が行われています。Elsevier社のジャーナルの閲覧は、他のどの出版社よりも毎年一貫して高かったことがわかりました。
また、Elsevier社のジャーナル掲載論文がケンブリッジ大学の研究者に引用される頻度についても調査が行われています。Dimensions APIを使用することで、2015年から2020年の間にケンブリッジ大学の研究者が著した論文で引用された出版物のデータセットが作成されました。結果、引用された出版物のうち、22%がElsevier社のものであることがわかりました。
Elsevier社への支出については、オープンアクセス出版のための支出に関するデータを集約・利用可能にするイニシアティブであるOpenAPCのデータと学内のデータを組み合わせて分析が行われました。OpenAPCのデータによると、全ての機関の論文掲載料(APC)の支出の19%をElsevier社が占めています。対して、ケンブリッジ大学では、30%をElsevier社が占めており、支払額の平均は3,302ポンドであると述べられています。
まとめとして、Elsevier社のジャーナルが最も閲覧・出版されているだけでなく、全て出版社のうち最もペイウォールの背後にあり、最も費用がかかっていることを示すことができたとしています。これは、進行中の交渉の重要性ならびに他のオプションを検討することの重要性を強調することに役に立つと述べられています。
Informing the Elsevier negotiations: Dominic Dixon on the work of the Data Analysis Working Group(Unlocking Research, 2021/9/24)
https://unlockingresearch-blog.lib.cam.ac.uk/?p=3018
参考:
英・ケンブリッジ大学図書館の「プランB」:学術出版社との交渉決裂時に取り組む代替策(記事紹介)
Posted 2021年9月13日
https://current.ndl.go.jp/node/44793
Elsevier社のアクセス制限がドイツの研究者の出版行動と引用行動に与えた影響(文献紹介)
Posted 2021年6月3日
https://current.ndl.go.jp/node/44132
E2420 – ビッグディール契約キャンセルの影響調査(米国)
カレントアウェアネス-E No.419 2021.09.02
https://current.ndl.go.jp/e2420