英・ケンブリッジ大学図書館の「プランB」:学術出版社との交渉決裂時に取り組む代替策(記事紹介)

英・ケンブリッジ大学のOffice of Scholarly Communicationによるブログ“Unlocking Research”に、2021年9月2日付けで、同大学図書館のコレクション開発・管理責任者であるMichael Williams氏による投稿が掲載されています。

英国の大学連合では、2021年末にElsevier社との電子ジャーナル契約更新を控えており、現在契約条件に関する交渉を進めています。本記事では、仮に交渉が決裂した場合に同大(及び同館)が「プランB」としてどのような代替策の準備を行っているかを説明しています。

記事によれば、Elsevier社との交渉に際し同大の研究者コミュニティにも参加してもらうよう最善を尽くしており、契約やプランBに関する決定は全て、研究者コミュニティとのやりとりや参加を経た上で行うこととしています。また、Elsevier社との交渉に関する情報は同大のウェブサイト上でまとめられており、研究者向けに意見の提出方法も案内しています。

プランBでは、利用者が最小限の手間で可能な限りシームレスに論文を入手できるように、ディスカバリのためのブラウザ拡張機能の利用や図書館間貸出(ILL)などのドキュメントデリバリーサービスを含めた、統合型ワークフローの開発を進めています。さらに、需要が高いコアタイトルのみの購読や、オープンアクセスコンテンツの利用促進といった代替策にも言及しています。

今回のプランBは、Elsevier社だけでなく、他の大手商業出版社との間で同様のケースが発生した際にも機能すると述べています。記事の最後では「我々が交渉で強く出るためには、Elsevier社や大手出版社からの提案に代わるだけの、綿密に計画された、信頼できる代替案を持たねばならない」と強調しています。

Michael Williams on the Elsevier negotiations: What’s our ‘Plan B’?(Unlocking Research, 2021/9/2)
https://unlockingresearch-blog.lib.cam.ac.uk/?p=2997

関連:
University of Cambridge and Elsevier(University of Cambridge)
https://www.openaccess.cam.ac.uk/publishing-open-access/university-cambridge-and-elsevier
※Elsevier社との交渉に関する情報をまとめた同大のウェブページです。

参考:
Elsevier社のアクセス制限がドイツの研究者の出版行動と引用行動に与えた影響(文献紹介)
Posted 2021年6月3日
https://current.ndl.go.jp/node/44132

E2420 – ビッグディール契約キャンセルの影響調査(米国)
カレントアウェアネス-E No.419 2021.09.02
https://current.ndl.go.jp/e2420