英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)、公共貸与権による支払い対象の範囲拡大を発表:北アイルランドの公共図書館による「遠隔電子貸出」を新たに追加

2021年6月10日、英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は、公共貸与権(PLR)による支払い対象の範囲拡大について、2021年4月8日から4月28日まで実施されていたパブリックコメントの結果と、それに基づく英国政府の対応を発表しました。

パブリックコメントでは、PLRによる支払い対象に、北アイルランドの公共図書館による「遠隔電子貸出」(remote e-lending)を新たに追加するという修正案への意見が求められました。著者、図書館、出版社、書店を代表する組織からの意見を含む、計13件の意見が寄せられ、いずれも修正案に賛成する内容でした。その中には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下における遠隔電子貸出の顕著な増加に照らし、今回の修正案は特に重要であるとの意見も含まれていたと特記されています。

発表では、今回のパブリックコメントに至る経緯も記載されています。英国では、2017 年デジタル経済法(Digital Economy Act 2017)の第31条において、公共図書館による電子書籍・電子オーディオブックの「遠隔電子貸出」(remote e-lending)が新たにPLRによる支払い対象に含められました。イングランド、スコットランド、ウェールズでは第31条が発効しましたが、北アイルランドでは、当時北アイルランド政府(Northern Ireland Executive)が停止状態にあったため第31条が発効せず、再開後の発効が約束されていました。

パブリックコメントの結果を受け、すでに英国議会においてPLRの対象範囲に関する規則変更の手続きが開始されています。英国では、7月から翌年6月までを一年度としてPLRの支払額が算定されますが、新年度が始まる2021年7月に間に合うよう新規則を発効するとしており、このことによって英国全体におけるアプローチの一貫性が確保される、と述べています。

Government Response to a Consultation on the proposal to extend the Public Lending Right to include remote e-lending from public libraries in Northern Ireland.(GOV.UK, 2021/6/10)
https://www.gov.uk/government/consultations/consultation-on-a-technical-variation-to-the-public-lending-right-scheme/government-response-to-a-consultation-on-the-proposal-to-extend-the-public-lending-right-to-include-remote-e-lending-from-public-lib…

参考:
英国、2018年7月1日から公共貸与権の対象を電子書籍・オーディオブックに拡大
Posted 2018年6月12日
https://current.ndl.go.jp/node/36144

E2266 – 台湾における公共貸与権の試行導入
カレントアウェアネス-E No.392 2020.06.11
https://current.ndl.go.jp/e2266

CA1754 – 動向レビュー:英国における公貸権制度の最新動向―「デジタル経済法2010」との関連で / カオリ・リチャーズ
カレントアウェアネス No.309 2011年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1754

CA1579 – 動向レビュー:公共貸与権をめぐる国際動向 / 南亮一
カレントアウェアネス No.286 2005.12.20
http://current.ndl.go.jp/ca1579