2021年3月23日、米国のオクラホマ大学は、米国議会図書館(LC)が同大学図書館のタスクフォースによる提案を受け入れて、米国議会図書館件名標目表(LCSH)の件名標目“Tulsa Race Riot”(「タルサ人種暴動」)を“Tulsa Race Massacre”(「タルサ人種虐殺」)に変更したことを発表しました。
「タルサ人種虐殺」は1921年の5月31日から6月1日にかけて、オクラホマ州タルサのグリーンウッド地区で、白人の暴徒が黒人住民に対する襲撃、家屋・店舗の破壊等を行った事件です。多数の黒人住民が犠牲になり、数千人が家屋等に被害を受け、米国史上でも最大規模の特定人種への暴力事件であるにもかかわらず、当時の報道ではほとんど扱われていませんでした。
同大学図書館の情報専門家らで構成するLCSHの件名標目の変更提案に関するタスクフォースは、この事件について歴史的に正確で文化的に適切な名称を与えるべきであるという立場から、2020年にLCへ件名標目の変更に関する提案書を提出していました。タスクフォースは提案の正当性を裏付けるために、既存のLCのリサーチガイドや議会の記録、Google検索におけるヒット数等の多様な情報源から、「虐殺」が歴史的により正確であり、現在も主に用いられている用語であることを示しています。
タスクフォースは、人や出来事を指し示すために使われる名称は認識に影響を与え、影響された個々の認識は社会正義の実現にも影響を与えるという共通理解の下で活動しています。今後も米国南西部に関わり、同様の問題を孕んだ件名標目に対して、変化を促すための活動を行う予定です。
また、オクラホマ大学図書館は2021年に「タルサ人種虐殺」発生から100年を迎えることを受けて、写真や事件の生存者の証言等を紹介する展示“From Tragedy to Triumph”を実施しています。
Library of Congress Accepts OU Libraries’ Proposal to Change Subject Heading to ‘Tulsa Race Massacre’(The University of Oklahoma,2021/3/23)
https://www.ou.edu/web/news_events/articles/news_2021/library-of-congress-accepts-ou-libraries-proposal-to-change-subject-heading-to-tulsa-race-massacre
関連:
Tulsa Race Massacre, Tulsa, Okla., 1921(Library of Congress Authorities)
https://lccn.loc.gov/sh2019000150
From Tragedy to Triumph: Race Massacre Survivor Stories(University of Oklahoma Libraries)
https://libraries.ou.edu/content/tragedy-triumph-race-massacre-survivor-stories
Remembering the Tulsa Race Massacre(The University of Oklahoma)
https://www.ou.edu/tulsa1921
参考:
米・ハーバード大学図書館、件名標目“illegal alien”の使用終了を発表
Posted 2021年3月11日
https://current.ndl.go.jp/node/43517
ブリティッシュコロンビア大学図書館(カナダ)の件名標目における先住民族「脱植民地化」に向けた取り組み(記事紹介)
Posted 2020年7月7日
https://current.ndl.go.jp/node/41444
LCSHの見直しについて−LC目録政策及び支援局長へのインタビュー
Posted 2006年8月11日
https://current.ndl.go.jp/node/4438
CA905 – 件名とフェミニズム:「女性」に関するLCSH / 中井万知子
カレントアウェアネス No.170 1993.10.20
https://current.ndl.go.jp/ca905