米国・スペインの大学図書館が締結した電子ジャーナル契約のライセンス条項の比較と検討(文献紹介)

2021年3月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries(C&RL)”のVol.82, no.2に、スペイン・グラナダ大学のフェルナンデス・モリーナ(Juan-Carlos Fernández-Molina)教授を筆頭著者とする論文“Comparing Use Terms in Spanish and US Research University E-journal Licenses: Recent Trends”が掲載されています。

同論文は米国・スペインの学生数4万人を超える公立の研究大学を対象に、各大学が出版社と締結した電子ジャーナル契約のライセンス条項について、比較・検討した結果を報告する内容です。2016年秋に、2大学が著者らの呼びかけに応じて、商業出版社・大学出版局・学協会を含む合計18社と締結・署名した電子ジャーナルの購読契約について、ライセンス条項の内容を提供しました。合計36件のライセンス契約に記載された、電子リザーブ、図書館間相互貸借(ILL)、テキスト・データ・マイニング(TDM)、著者の権利と著作権の例外の取り扱い、利用統計、準拠法、データのプライバシー、セキュリティに関する義務等の各条項について、契約締結年・出版社の種別の観点による整理、及び北米の研究図書館センター(CRL)の“Liblicense”や米・カリフォルニア電子図書館(CDL)の“CDL Model License”のようなライセンス契約モデルの推奨事項との比較による検討が行われています。

検討の結果として、ILL依頼館への送付物を印刷媒体に限定する制限“print rerquirement”が契約年が新しくなるにつれて撤廃されていることなど、ライセンス契約モデルの推奨事項と同等の内容に向けて進展のある条項が存在する一方で、リポジトリ等へのセルフアーカイブに関する著者の権利、利用統計、プライバシーなどの条項について、推奨事項と同等の条件を提供する契約が少ないことを報告しています。

また、2大学の契約条項の比較として、ILLにおける“print rerquirement”による制限はスペインの大学の契約で含まれる割合が高いこと、スペインの大学が締結した契約でも準拠法としてスペインの法律への言及は存在せず、大半が米国著作権法第108条をはじめとする米国法に準拠していたことを報告しています。著者らは、2大学のみの比較という研究上の限界に留保しつつ、前者の相違は国境を越えたILLサービスの展開の妨げになっている可能性があること、後者の相違は主要な学術出版社が米国や英国に集中しているため他国の図書館が米国法・英国法への対応を強いられている実情を反映していることを指摘しています。

Fernández-Molina, Juan-Carlos; Eschenfelder, Kristin R.; Rubel Alan. A Comparing Use Terms in Spanish and US Research University E-journal Licenses: Recent Trends. C&RL , 82(2), 2021, p. 158-181.
https://doi.org/10.5860/crl.82.2.158

関連:
Liblicense(CRL)
http://liblicense.crl.edu/

CDL Model License Revised(CDL,2017/1/25)
https://cdlib.org/cdlinfo/2017/01/25/cdl-model-license-revised/

参考:
研究図書館センター(CRL)等、“LIBLICENSE Model License Agreement”の改訂版を発表
Posted 2014年12月8日
https://current.ndl.go.jp/node/27593

E1184 – 電子リソース時代に国際ILL/DDを維持するためには
カレントアウェアネス-E No.195 2011.06.23
https://current.ndl.go.jp/e1184

CA1512 – 動向レビュー:電子ジャーナルの出版・契約・利用統計 / 加藤信哉
カレントアウェアネス No.278 2003.12.20
https://current.ndl.go.jp/ca1512