2021年2月18日付で、北米研究図書館協会(ARL)が”Persistent Identifiers Connect a Scholarly Record with Many Versions”と題したブログ記事を掲載しました。ブログ記事では、学術コミュニケーションを出版者版が権威をもつ“version of record” (出版者版)からより多様で包括的な“record of versions”に移行する必要性とともに、“record of versions”では永続的識別子(PID)が大きな役割を果たすことが述べられています。
過去数ヶ月の間に大手商業出版社は、Plan Sの権利保持戦略等、著者稿をリポジトリで共有するグリーンオープンアクセスに対する懸念を表明してきました。懸念の理由として、(1) 複数の劣った(inferior)版が研究者に混乱を引き起こすこと、(2) 研究助成機関がゴールドオープンアクセスのために資金提供することと著者がリポジトリで成果を共有することを許可すると、出版社が“version of record”の維持に要する資金が脅かされることを挙げています。
記事では、新しい出版方法と他の研究成果(ポストプリント、プロトコル、データ、コード等)の出版により、“version of record”という用語はほとんど意味をなさなくなったことを指摘しています。学術コミュニケーションの展望は、単一の“version of record”から、複数の版と成果を包含し、より多様で包括的な出版環境の余地を作る“record of versions”にすでに移行しているとし、永続的識別子は、研究成果が格納されている場所に関係なく、それらの発見可能性とリンクを強化すると述べています。
図書館は、学術記録への公平で永続的なアクセスを確実にするために学術エコシステム全体で連携する上で重要な役割を果たすとしています。このことから、“record of versions”を受容し、研究成果を相互に結びつける永続的識別子を促進することを呼びかけています。
Persistent Identifiers Connect a Scholarly Record with Many Versions(ARL, 2021/2/18)
https://www.arl.org/blog/persistent-identifiers-connect-a-scholarly-record-with-many-versions/
参考:
cOAlition S、国際STM出版社協会の「権利保持戦略」に対する懸念表明へ反論
Posted 2021年2月10日
https://current.ndl.go.jp/node/43253
国際STM出版社協会、出版社・学協会と連名でプランSの「権利保持戦略」に対する懸念を表明
Posted 2021年2月5日
https://current.ndl.go.jp/node/43214
※情報源の記載を修正しました。(2021/2/26)