2020年12月11日、欧州原子核研究機構(CERN)は、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の主要な共同実験プロジェクトであるALICE・ATLAS・CMS・LHCbが、LHCにおける科学実験の新たなオープンデータポリシーを全会一致で承認したことを受けて、同ポリシーを評議会へ提出したことを発表しました。
CERNの新たなオープンデータポリシーは2020年11月付で策定されました。科学研究について、再現性を高め、アクセスしやすく、共同研究を可能にすることを目的としたオープンサイエンスの高まりに対応して、同ポリシーを策定したことが紹介されています。
CERNは高エネルギー物理学(HEP)データを複雑性に応じて、公表された研究成果物(レベル1)、アウトリーチ・教育目的で作成されたデータ(レベル2)、研究上の利活用が可能な再構成データ(レベル3)、実験の生データ(レベル4)の4種類に分類していますが、新たに策定されたポリシーは特にレベル3のデータの公開に関連しています。新ポリシーではレベル3に該当するデータについて、収集から5年以内に公開を開始し関連する実験が終了するまでに完全なデータセットを公開すること、データの利活用に必要なソフトウェアやドキュメントも同時に公開すること、公開されたデータはCERNのオープンデータポータル“CERN Open Data Portal”上でCC0により提供されること、などを定めています。
また、レベル1のデータは既存のオープンアクセス(OA)方針により全てOAで公開されていること、レベル2のデータは実験ごとに定められた時期と範囲で公開されること、レベル4のデータの公開は基本的に行わないこと、などを定めています。
新たに策定されたオープンデータポリシーの全文は、CERNが運営する高エネルギー物理学分野の研究成果物等に関するリポジトリ“CERN Document Server”上で公開されています。
CERN announces new open data policy in support of open science(CERN,2020/12/11)
https://home.cern/news/press-release/knowledge-sharing/cern-announces-new-open-data-policy-support-open-science
CERN Open Data Policy for the LHC Experiments(CERN Document Server)
http://cds.cern.ch/record/2745133/
参考:
欧州原子核研究機構(CERN)、実験データ等を公開するポータル“CERN Open Data Portal”を公開
Posted 2014年11月25日
https://current.ndl.go.jp/node/27498
E2162 – どの研究データを保存すべきか:英・Jiscによる調査レポート
カレントアウェアネス-E No.373 2019.07.25
https://current.ndl.go.jp/e2162
E2250 – 研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定
カレントアウェアネス-E No.389 2020.04.23
https://current.ndl.go.jp/e2250
E2333 – 第1回SPARC Japanセミナー2020<報告>
カレントアウェアネス-E No.404 2020.12.10
https://current.ndl.go.jp/e2333