2020年11月11日、オーストラリア大学図書館員協議会(CAUL)は、新型コロナウイルス感染症拡大期の学生・研究者支援における「1968年著作権法(Copyright Act 1968)」規定の利用状況調査として実施した、会員館向けアンケートの要約を公開したことを発表しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、大学キャンパスへの物理的なアクセスがほぼ不可能となる前例のない環境を作り出し、オーストラリアの大学図書館は大学構成員向けにオンラインリソースの提供・リモートアクセスサービスの案内・デジタル複製の活用等を進めてきました。オーストラリアの著作権法は、デジタル複製の作成や遠隔地への資料提供を可能にする規定がありますが、感染症拡大期にこれらの規定が大学図書館において、どの程度利用されたかの情報を収集するためにアンケート調査が実施されました。アンケート調査にはCAULの会員館のうち25館が回答し、回答から得られた主な知見として以下のことが示されています。
・現在、オーストラリアの大学図書館の資料費の8割以上は電子資料の購入に費やされているが、過去に収集した蔵書の大半は冊子版のみで電子的に利用することが出来ず、著作権法の規定はこうした資料に対して行われていた
・一定の条件下で図書館等のデジタル複製を認める200AB条について、著作権法の規定に拠らなくても利用可能なケースについても同条項を利用しているという回答が確認されるなど、条文の文言に問題があり効果的に活用されていなかった
・完全なオープンアクセスでない電子資料の貸出を“controlled digital lending”によって提供することが現行の法制度では認められていないためか、HathiTrustやInternet Archiveといった外部情報源の活用は予想よりも低調であった
・著作権法改正に向けた現在進行中の取り組みは、大学支援の観点からも重要である
News(CAUL)
https://www.caul.edu.au/news
※11 November 2020欄に“Copyright and COVID-19 Survey Report”とあります。
Copyright and COVID-19: Summary of results of a survey of members of the Council of Australian University Librarians (CAUL) [PDF:11ページ](CAUL)
https://www.caul.edu.au/news/copyright-and-covid-19-survey-report
参考:
オーストラリア大学図書館員協議会(CAUL)、新型コロナウイルス感染症に関する規制の緩和を受けた会員館の再開館計画等についてアンケート調査を実施
Posted 2020年5月28日
https://current.ndl.go.jp/node/41063
オーストラリア連邦議会、著作権法改正法案を可決:障害者の著作物へのアクセス促進及びデジタル教育環境下での著作物の利用促進等
Posted 2017年6月26日
https://current.ndl.go.jp/node/34249
オーストラリア政府、著作権法を改正予定であることを発表:デジタル環境での資料へのアクセス支援のため
Posted 2020年8月14日
https://current.ndl.go.jp/node/41745