2020年10月29日、米国図書館協会(ALA)は、9月22日付で発令された人種と性のステレオタイプに関する大統領令“Executive Order on Combating Race and Sex Stereotyping”に対する声明を発表しました。
この大統領令は、連邦政府の職員・政府からの契約を請け負った事業者・助成金の受領者に対して、批判的人種理論や白人優位主義に関する議論・検討を禁止し、ダイバーシティに関する教育・研修を中止することを求めています。ALAは発表した声明の中で、この大統領令がダイバーシティに関する教育・研修は人種差別や性差別を再生産するという悪意に満ちた誤りの主張に基づいているとして、否定する立場を明らかにしています。
ALAは、図書館・図書館員が、黒人・先住民・有色人種の人々を抑圧・排除し、女性への機会平等を否定するシステムに加担してきたことを認識し、平等な権利と機会を保障する国家の義務を果たすためには、痛ましく残酷な歴史に学ぶことが不可欠であると主張しています。また、助成金交付の中止を恐れてプログラムの中止を決めた機関が確認され、ホットラインを設置して違反の報告が奨励されていることについて、「マッカーシズム」による検閲を想起させるものとして懸念しています。
ALAは、幅広く多様な見解や表現へのアクセスを確保することで知的自由を促進することが図書館の役割であり、社会正義と公平性、多様性、インクルージョンの追求がALAの中核的価値でもあるという立場から、発令された大統領令を含む表現の自由と社会正義の縮小につながるすべての行動に反対し、社会正義の追求の継続と、システムによる抑圧へ対抗する活動を推進することを明言しています。
ALA Statement on Executive Order on Combating Race and Sex Stereotyping(ALA,2020/10/29)
http://www.ala.org/news/press-releases/2020/10/ala-statement-executive-order-combating-race-and-sex-stereotyping
関連:
Executive Order on Combating Race and Sex Stereotyping(White House,2020/9/22)
https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/executive-order-combating-race-sex-stereotyping/
参考:
CA905 – 件名とフェミニズム:「女性」に関するLCSH / 中井万知子
カレントアウェアネス No.170 1993.10.20
https://current.ndl.go.jp/ca905
E599 – 米国図書館員はダイバーシティに欠けている?
カレントアウェアネス-E No.99 2007.01.31
https://current.ndl.go.jp/e599
米国図書館協会の公正・多様性・インクルージョンに関するタスクフォースが最終報告書を公開
Posted 2016年6月13日
https://current.ndl.go.jp/node/31788
米国図書館協会(ALA)、黒人・先住民・有色人種(BIPOC)、抗議デモへの参加者、ジャーナリストへの警察の暴力を非難する声明を発表
Posted 2020年6月12日
https://current.ndl.go.jp/node/41205
米国図書館協会(ALA)、トランスジェンダーの人々の諸権利を支持する声明を発表
Posted 2020年7月8日
https://current.ndl.go.jp/node/41450