インドにおける国単位での学術文献購読契約の計画(記事紹介)

2020年9月30日付けのNature誌オンライン版で、”India pushes bold ‘one nation, one subscription’ journal-access plan”と題された記事が公開されました。記事は、インド政府が進める「国内のすべての人が学術文献に無料でアクセスできるようにする」という「大胆な」(bold)提案について報じています。

インド政府は研究者のみが利用できる機関ごとの購読契約ではなく、国単位の購読契約を締結するために世界最大の学術出版社等と交渉することを希望しているとしています。この提案は、インド政府のOffice of the Principal Scientific Adviserと科学技術庁(Department of Science and Technology)によって策定されている政府の最新の科学・技術・イノベーション政策の一部となることが期待されています。

大まかな見積によると、インドの研究機関は年間少なくとも150億ルピー(2億米ドル)を学術文献の購読に費やしています。諮問グループのメンバーは、国単位で交渉することによってこれらのコストを大幅に削減し、全国民にアクセスを拡大することができるとしています。しかし、出版社がこれまでの契約から大きく逸脱しないかぎりコストが大幅に削減される可能性は低いことや、インドの人口にアクセスを提供することの技術的な課題が指摘されています。

この提案は、Plan Sへの参加を検討する議論から生まれたとしています。インドのオープンアクセス支持者は、多くのオープンアクセスジャーナルが論文掲載料(APC)を課していることから、Plan Sはインドでは機能しないとしています。よって、インドではリポジトリによるオープンアクセス(グリーンオープンアクセス)が望ましいことが指摘されています。一方、グリーンオープンアクセスについての課題も指摘されています。インドでは既存のリポジトリはあまり人気がないことが述べられています。2014年に科学技術庁とバイオテクノロジー庁は「助成された全ての研究は、ジャーナルが定めるエンバーゴ期間後にリポジトリで公開しなければならない」と発表したのにも関わらず、これまでに公開された研究はごくわずかであるとしています。

先述の科学・技術・イノベーション政策の草案は今後数週間以内に公表される可能性が高く、内閣の承認が必要となります。

India pushes bold ‘one nation, one subscription’ journal-access plan(Nature, 2020/9/30)
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02708-4

参考:
Science Europe、研究成果物の完全で即時のオープンアクセスを実現するための公的助成機関によるイニシアチブ“cOAlition S”の開始を発表
Posted 2018年9月6日
https://current.ndl.go.jp/node/36610