2020年9月8日付で、Elsevier社が刊行する大学図書館の関わるテーマを主に扱う査読誌“The Journal of Academic Librarianship”掲載記事として、米・テキサス工科大学の研究者5人による共著論文“A qualitative content analysis of watchlists vs safelists: How do they address the issue of predatory publishing?”がオープンアクセス(OA)で公開されています。
学術出版において、ハゲタカジャーナル・ハゲタカ出版に対する懸念はますます高まっています。この問題へ対抗するため、多くの個人・団体・企業がハゲタカ雑誌・出版社の特定を目的とした「警戒リスト(watchlist)」や、信頼のおける雑誌・出版社の特定を目的とした「安全リスト(safelist)」の作成を試みています。
著者らはハゲタカ出版をとりまく議論への洞察を深めるため、これらのリストの理念や収録・除外基準を調査し質的内容分析を実施しました。4種類の「警戒リスト」と10種類の「安全リスト」の分析の結果として、かつてハゲタカ出版リストを作成していた図書館員ビール(Jefrey Beall)氏の影響が「警戒リスト」には残っている一方で、「安全リスト」は同氏の手法を明確に否定していることや、「リスト」によるアプローチでは、システムとして構築されたハゲタカ出版の側面に完全に対処するのは難しいという認識が高まっていることなどを報告しています。
Koerber, Amy. et al. A qualitative content analysis of watchlists vs safelists: How do they address the issue of predatory publishing?. The Journal of Academic Librarianship. 2020, 46(6), 102236.
https://doi.org/10.1016/j.acalib.2020.102236
参考:
CA1960 – ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から / 千葉 浩之
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1960
単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2013年版)
Posted 2012年12月10日
https://current.ndl.go.jp/node/22481
匿名の研究者により続けられる「ハゲタカ出版」の監視(記事紹介)
Posted 2018年3月27日
https://current.ndl.go.jp/node/35731
米国・カナダ・ラテンアメリカの大学図書館におけるハゲタカ出版に対する取り組み(文献紹介)
Posted 2020年8月11日
https://current.ndl.go.jp/node/41711
ユサコ株式会社、信頼できるジャーナル・ハゲタカジャーナルに関するCabells社提供のデータベース商品について総代理店契約を締結
Posted 2020年8月31日
https://current.ndl.go.jp/node/41868