米国・カナダ・ラテンアメリカの大学図書館におけるハゲタカ出版に対する取り組み(文献紹介)

2020年7月8日付で、図書館情報学分野の査読誌“Aslib Journal of Information Management”にて、研究論文“Investigating academic library responses to predatory publishing in the United States, Canada and Spanish-speaking Latin America”が公開されていました。カナダ・オタワ大学の機関リポジトリで、著者版が公開されています。

論文では、米国、カナダ、スペイン語圏のラテンアメリカの国々の大学図書館におけるハゲタカ出版に対する取り組みについて比較調査が実施されています。Times Higher Education(THE)社の世界大学ランキングで上位に位置している各地域の大学の大学図書館が対象となっています。各大学図書館のウェブサイトを閲覧して、学術コミュニケーション司書の雇用、学術コミュニケーションに関するワークショップの開催、ウェブサイトでの学術コミュニケーションに関する情報の提供の有無について調査しています。さらに、これらのイベントや情報にて、ハゲタカ出版が扱われているか探っています。

米国、カナダの多くの大学図書館が学術コミュニケーション司書を雇用しており、約半数がハゲタカ出版についてのワークショップを提供しています。一方、ラテンアメリカの大学図書館での学術コミュニケーション司書の雇用は観察されませんでした。また、米国の大学図書館のウェブサイトはハゲタカ出版について直接的に扱っているが、カナダの大学図書館のウェブサイトは間接的に扱う傾向があると報告しています。ラテンアメリカの大学図書館では、ハゲタカ出版は直接的にはほとんど扱われておりませんが、セルフ・アーカイビングやオープンアクセスについては言及されていると述べています。

オンラインチュートリアルの作成、ハゲタカ出版に留まらずハゲタカ会議(predatory conference)といったあらゆるハゲタカ活動についての情報の提供といったハゲタカ出版に関する注意喚起に関する推奨事項を7点挙げています。

Buitrago Ciro, J.; Bowker, L. Investigating academic library responses to predatory publishing in the United States, Canada and Spanish-speaking Latin America. Aslib Journal of Information Management 2020.
https://doi.org/10.1108/AJIM-03-2020-0089
https://ruor.uottawa.ca/handle/10393/40733
※二つ目のリンクはオタワ大学の機関リポジトリで公開された著者版です。

参考:
米・テキサス工科大学のプロジェクトチームが米国科学財団(NSF)の助成によりハゲタカジャーナルと信頼のおけるジャーナルを見分けるための教育プログラム開発に着手
Posted 2019年10月1日
https://current.ndl.go.jp/node/39155

CA1960 -ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から
カレントアウェアネス No.341 2019.09.20
https://current.ndl.go.jp/ca1960