Internet Archive(IA)は2020年7月29日付で公開したブログ記事において、商業出版社4社がIAの“Controlled Digital Lending(CDL)”による電子書籍貸出の停止を求めて提起した著作権侵害訴訟への答弁書(Response)を、前日28日に提出したことを発表しました。
図書館の所蔵する冊子体資料をデジタル化して、ファイルの再配布に制限を付けて行われるCDLを通した電子書籍貸出は、9年以上実施され広く米国の図書館界に普及していることなどを挙げ、米国著作権法は図書館が所蔵する資料をデジタル化し、管理された方法で利用者に貸出する権利を阻んでいないとして、IAはCDLによる電子書籍貸出の適法性を主張しています。
ブログ記事では、作家の利益促進のために活動する米国の非営利団体“Authors Alliance”がCDLによる電子書籍貸出をフェア・ユースとして支持する見解を表明したことや、多くの教育機関が公衆衛生上の懸念から資料へのアクセスを厳しく制限する中で行われるこの訴訟は、学習者への情報アクセスを維持するために取り組む図書館等の試みを阻害するものであることにも言及しています。
また、出版社4社が単に貸出の停止だけでなく、約150万冊のデジタル化済資料の破棄を求めていることにも触れ、もし出版社側の主張が認められると、視覚障害・プリントディスアビリティを持つ人々の利益を不当に害する恐れがあることも指摘しています。
Libraries lend books, and must continue to lend books: Internet Archive responds to publishers’ lawsuit(IA,2020/7/29)
https://blog.archive.org/2020/07/29/internet-archive-responds-to-publishers-lawsuit/
Defendant Internet Archive’s Answer And Affirmative Defenses To The Complaint [PDF:28ページ]
https://www.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.nysd.537900/gov.uscourts.nysd.537900.33.0.pdf
※IAが提出した答弁書の全文です
関連:
Copyright Expert on Publishers Lawsuit: “The idea that lending a book is illegal is just wrong”(IA,2020/7/28)
https://blog.archive.org/2020/07/28/copyright-expert-on-publishers-lawsuit-the-idea-that-lending-a-book-is-illegal-is-just-wrong/
参考:
Internet Archive、OpenLibraryで電子書籍貸出プログラムを開始
Posted 2011年2月23日
https://current.ndl.go.jp/node/17651
米国の複数の大手出版社がInternet Archive(IA)に対する著作権侵害訴訟を提訴
Posted 2020年6月3日
https://current.ndl.go.jp/node/41125
米・SPARC、Internet Archive(IA)による“Controlled Digital Lending”に基づく事業への支持を表明
Posted 2020年7月1日
https://current.ndl.go.jp/node/41392
Public Knowledge、図書館による自由な電子書籍の購入・貸出等の法制化を求めるキャンペーン“Tell Congress to Let Libraries Fight Back”を開始
Posted 2020年7月27日
https://current.ndl.go.jp/node/41576
CA1978 – 動向レビュー:米国での電子書籍貸出をめぐる議論 / 井上靖代
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1978
CA1979 – 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳)
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1979
E2279 – オーストラリアの公共図書館は電子書籍をどう選んでいるか
カレントアウェアネス-E No.394 2020.07.09
https://current.ndl.go.jp/e2279