Public Knowledge、図書館による自由な電子書籍の購入・貸出等の法制化を求めるキャンペーン“Tell Congress to Let Libraries Fight Back”を開始

オープンなインターネット空間促進のために活動する米国の非営利の公益団体Public Knowledgeは、2020年7月1日付のブログ記事において、図書館による自由な電子書籍の購入・貸出等の法制化を求めるキャンペーン“Tell Congress to Let Libraries Fight Back”の開始を発表しました。

Public Knowledgeは、購入・貸出等を通した図書館の使命と著作権システムとは、数世紀にわたって良好な共存関係を築いていたものの、電子資料の普及によって従来の関係の維持が困難となり、利用可能な期間や購入可能なタイトルに著しい制限の付いたタイトルを消費者価格の3倍から5倍の価格で図書館が購入しなければならないなど、出版社に有利な状況に傾いていることを指摘しています。また、冊子体書籍の貸出について、図書館が所蔵資料をデジタル化し“Controlled Digital Lending”技術によって「一部1ユーザー」で貸出する動きがInternet Archive(IA)を中心に進展しており、これは新型コロナウイルス感染症拡大に伴う物理的な図書館の相次ぐ閉館で表面化したように、低所得者などコミュニティの周縁に属する人々への情報アクセス手段として不可欠なものとなっていることを紹介しています。

Public Knowledgeはこのような電子資料の普及に伴う情勢を背景に、全ての人々に資料へのアクセスを提供するという図書館の使命を維持できるように、立法機関の介入によって、図書館は自由に資料の購入や貸出ができることを明確化すべきである、と主張しています。明確化すべき内容として、冊子体資料と同様に図書館が電子書籍等のデジタル資料を自由に購入・貸出できることの法律による保証、図書館が消費者市場と同一価格で電子書籍を購入し貸出する権利の付与、期限付きの利用可能ライセンスなど図書館の教育・保存機関としての使命に相容れない制限の撤廃、“Controlled Digital Lending”によるデジタル化した複製物の貸出プログラムが適法であることの確認、などを挙げています。

Libraries Are Updating for Today’s Digital Needs. Congress Needs to Clear the Way.(Public Knowledge,2020/7/1)
https://www.publicknowledge.org/blog/libraries-are-updating-for-todays-digital-needs-congress-needs-to-clear-the-way/

Tell Congress to Let Libraries Fight Back
https://actnow.io/7opl7dh

Major Public Interest Group Launches Campaign to Let Libraries Fight Back(IA,2020/7/21)
https://blog.archive.org/2020/07/21/major-public-interest-group-launches-campaign-to-let-libraries-fight-back/

参考:
CA1978 – 動向レビュー:米国での電子書籍貸出をめぐる議論 / 井上靖代
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1978

CA1979 – 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳)
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1979

E2279 – オーストラリアの公共図書館は電子書籍をどう選んでいるか
カレントアウェアネス-E No.394 2020.07.09
https://current.ndl.go.jp/e2279

Internet Archive(IA)、“National Emergency Library”の終了を早めることを発表
Posted 2020年6月12日
https://current.ndl.go.jp/node/41213

米国の複数の大手出版社がInternet Archive(IA)に対する著作権侵害訴訟を提訴
Posted 2020年6月3日
https://current.ndl.go.jp/node/41125

米・ニューヨーク州議会へ事業者に合理的な条件で電子書籍を図書館へ提供することを義務づけた法案が上程される
Posted 2020年2月10日
https://current.ndl.go.jp/node/40205

連邦第二巡回区控訴裁判所、Googleブックスは著作権法に違反せずと判断
Posted 2015年10月19日
https://current.ndl.go.jp/node/29682