2019年11月1日、米国の大手出版社Macmillan社は、図書館向け電子書籍提供モデル変更を実施しました。新刊書の購入を各図書館1冊までに制限し2冊目以降の購入に8週間のエンバーゴを設けるという内容です。
米国図書館協会（ALA）は同日付のお知らせで、方針撤回を求める強固な世論が存在するにもかかわらず、同社はモデル変更の実施を行った、としています。ALAは同社の決定を受けて、今後も2019年9月11日からオンライン上で展開している同社への抗議キャンペーン“eBooksForAll.org”で、同社の方針への反対署名を募りながら電子書籍の購入制限がコミュニティへ与える影響に関するエピソードを収集する予定です。また、議会への働きかけをさらに強めることも表明しています。
ALAは、モデル変更が実施される直前の2019年10月30日に、同社CEOのJohn Sargent氏に対して、方針変更の撤回を求めた請願書を全国の読者・著者・図書館員ら16万人以上の署名とともに提出しています。また、請願書提出の数時間前には、Sargent氏がモデル変更の経緯を図書館員宛に説明した書簡が公表されていますが、ALAは、変更の背景とされる図書館での電子書籍貸出が出版社の利益を損なうというエビデンスが十分示されないまま変更を実施しようとしていること、ALAが出版社や著者らとともに取り組んできた持続可能な図書館の電子書籍貸出モデルを模索する努力を軽視していること等を指摘し、その内容に反発の意を示しています。
ALA delivers #eBooksForAll Petition, with 160,000+ Signatures, to Macmillan Publishers（ALA，2019/10/30）
http://www.ala.org/news/press-releases/2019/10/ala-delivers-ebooksforall-petition-160000-signatures-macmillan-publishers
ALA responds to Macmillan letter（ALA，2019/10/30）
http://www.ala.org/news/member-news/2019/10/ala-responds-macmillan-letter
https://d1x9nywezhk0w2.cloudfront.net/wp-content/uploads/2019/10/29160131/A-Letter-from-John-Sargent-.pdf
※2つ目のリンクはMacmillan社が公表した提供モデル変更の経緯を図書館員宛に説明した書簡です。（PDF：2ページ）
ALA turns to Congress as Macmillan ignores public call to reverse library e-book embargo（ALA，2019/11/1）
http://www.ala.org/news/press-releases/2019/11/ala-turns-congress-macmillan-ignores-public-call-reverse-library-e-book
#eBooksForAll
https://ebooksforall.org/
参考：
米国図書館協会（ALA）、Macmillan社に電子書籍のエンバーゴの撤回を求める請願書を公開：電子書籍無料貸出サービスも開始予定
Posted 2019年9月13日
https://current.ndl.go.jp/node/39025
米国図書館協会（ALA）、大手出版社Macmillan社の新しい電子書籍貸出モデルへのエンバーゴ設定について非難する声明を発表
Posted 2019年7月29日
https://current.ndl.go.jp/node/38685
米国図書館協会（ALA）と米・公共図書館協会（PLA）、州立図書館・地域図書館向けにMacmillan社の新しい電子書籍貸出モデルへの反対声明等として利用可能なテンプレートを公開
Posted 2019年8月28日
https://current.ndl.go.jp/node/38900
米国図書館協会（ALA）、図書館のコアサービス提供機能を制限するデジタル市場の商慣行是正を求めたレポートを米国下院に提出
Posted 2019年11月6日
https://current.ndl.go.jp/node/39433
