2019年10月23日、米国図書館協会(ALA)は、図書館のコアサービス提供機能を制限するデジタル市場の商慣行の是正を求めたレポートを米国下院に提出したことを発表しました。レポートは、Macmillan社が2019年11月1日から実施する図書館向け電子書籍の新しい提供モデルへのALAの抗議キャンペーン“#eBooksForAll”に続く形で公開されました。
ALAは、米国の下院司法委員会の下に設置された独占禁止法・商法および行政法に関する小委員会によるデジタル市場における競争の状況に関する情報提供の求めに応じたレポートとして、2019年10月15日付で“Competition in Digital Markets”を作成しました。ALAはレポートを通して、デジタル市場におけるAmazon社・Macmillan社等の企業の商慣行が、米国民の何をどのように選んで読書を行うかに関する権利を脅かし、合衆国憲法修正第1条で定められた基本的な自由を損なっていることを強調し、こうした反競争的な商慣行是正を議員らに訴えています。
レポートは、電子書籍・音楽等のストリーミングコンテンツを扱った第1章と学術・研究に関わるコンテンツを扱った第2章が主要な章となっています。第1章では、図書館向けの電子書籍の状況として、個人向けと比べて最大5倍程度の価格であること、個人向けと異なり2年間の購読制が一般的で継続アクセスを望む場合には更新ごとに支払いが発生すること、などの市場の状況が報告されています。また、ストリーミング配信される音楽・視聴覚コンテンツについては、個人使用に限定するライセンスによる提供が一般的であることから、図書館で貸出や保存を実施できない状況を報告しています。第2章では、学術雑誌の状況として、統廃合の進んだごく一部の学術出版社からビッグディール契約により購読するモデルに様々な弊害が発生していること、大学教科書の状況として、主要3社の寡占が進み深刻な価格のインフレが発生していること、などが報告されています。
ALA denounces Amazon, Macmillan in response to Congressional inquiry on competition in digital markets(ALA,2019/10/23)
http://www.ala.org/news/press-releases/2019/10/ala-denounces-amazon-macmillan-response-congressional-inquiry-competition
Competition in Digital Markets [PDF:7ページ](ALA,2019/10/15)
http://www.ala.org/news/sites/ala.org.news/files/content/mediapresscenter/CompetitionDigitalMarkets.pdf
関連:
#eBooksForAll
https://ebooksforall.org/
参考:
米国図書館協会(ALA)、Macmillan社に電子書籍のエンバーゴの撤回を求める請願書を公開:電子書籍無料貸出サービスも開始予定
Posted 2019年9月13日
https://current.ndl.go.jp/node/39025
米国図書館協会(ALA)、大手出版社Macmillan社の新しい電子書籍貸出モデルへのエンバーゴ設定について非難する声明を発表
Posted 2019年7月29日
https://current.ndl.go.jp/node/38685
米国図書館協会(ALA)と米・公共図書館協会(PLA)、州立図書館・地域図書館向けにMacmillan社の新しい電子書籍貸出モデルへの反対声明等として利用可能なテンプレートを公開
Posted 2019年8月28日
https://current.ndl.go.jp/node/38900
米国図書館協会(ALA)、出版大手Hachette Book Group(HBG)の発表した図書館向け電子書籍・オーディオブックの貸出モデル変更に懸念を表明
Posted 2019年7月8日
https://current.ndl.go.jp/node/38530
SPARC、米国司法省へMcGraw-Hill社とCengage社の合併計画阻止を求める文書を提出
Posted 2019年8月15日
https://current.ndl.go.jp/node/38798