2013年7月22日、米国歴史学協会(AHA)は、7月19日のAHA理事会で承認された声明を発表しました。声明では、歴史学の電子版博士論文のエンバーゴ期間を6年間とするもので、AHAは大学院課程および大学図書館に対しその方針を了承するよう強く要請しています。
声明によると、博士論文が電子版で公開されすぐに誰でも無料でアクセス可能となってしまうことにより、多くの大学出版局がそれらの論文を元にした研究書の刊行を渋ることになり、そのために博士号を取得したての若手研究者の単著の執筆機会が減ってしまうことになるとされています。大学のテニュア審査委員会では、単著がその執筆者の研究能力の“ものさし”に使われることから、声明では、博士論文のオンライン公開が若手研究者のキャリアに影響を与えかねないことが懸念されています。
なお、エンバーゴ期間を6年間としている理由については、多くの大学では博士号取得後6年間に専門書を刊行した若手研究者にのみテニュアを授与しているためのようです。
American Historical Association Statement on Policies Regarding the Embargoing of Completed History PhD Dissertations (American Historical Association 2013/7/22付けの記事)
http://blog.historians.org/2013/07/american-historical-association-statement-on-policies-regarding-the-embargoing-of-completed-history-phd-dissertations/
参考:
E1352 – 米国歴史学協会によるゴールドOAに対する憂慮とその反響
http://current.ndl.go.jp/e1352
社会科学・人文学分野で学位論文をオープンアクセスにすると、その内容を雑誌論文やモノグラフとして出版する機会は失われるのか?(文献紹介)
http://current.ndl.go.jp/node/23938