米国化学会(ACS)による“Article Development Charge”導入とその問題点:権利保持戦略の観点から(記事紹介)

2023年10月17日付けで、cOAlition Sのブログ“sOApbox”上で、米国化学会(ACS)による“Article Development Charge”(ADC)導入の問題点を論じる記事“American Chemical Society (ACS) and authors’ rights retention”が掲載されています。著者はcOAlition Sのアンバサダーで元JiscのSally Rumsey氏です。

記事では、論文をエンバーゴなしでグリーンオープンアクセス(OA)として公開できる新しいオプションであるADCモデルについて説明した上で、これが著者の研究成果に対する権利保持を妨げるものであると批判しています。また、ADCの具体的な問題点として、購読料との二重取りとなる懸念があること、ADCを支払うことで提供されるサービスの実質が不明瞭であることなどを指摘しています。

その上で、ACSが加盟するオープンアクセス学術出版協会(Open Access Scholarly Publishers Association;OASPA)がゼロエンバーゴや権利保持戦略、論文投稿プロセスの明確化に公式に賛同していることを指摘し、改めてACSを含む学術出版社に向けて、方針の転換を呼びかけています。

American Chemical Society (ACS) and authors’ rights retention(sOApbox, 2023/10/17)
https://www.coalition-s.org/blog/american-chemical-society-acs-and-authors-rights-retention/

参考:
オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)と大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)、共同で「米国化学会による著者最終稿の公開費導入に対する反対声明」を公表 [2023年11月14日]
https://current.ndl.go.jp/car/195337

オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)、米国化学会(ACS)による“Article Development Charge”導入に関して意見を表明 [2023年10月31日]
https://current.ndl.go.jp/car/194844

オーストラリア大学図書館員協議会(CAUL)とOpen Access Australasia、米国化学会(ACS)による新しいオープンアクセスオプションに関して声明を発表 [2023年10月18日]
https://current.ndl.go.jp/car/194251

米国化学会(ACS)、エンバーゴなしで論文をグリーンオープンアクセス(OA)で公開するための新オプションを導入 [2023年10月13日]
https://current.ndl.go.jp/car/193997

米・アイビー・プラス図書館連合、米国化学会(ACS)による“Article Development Charge”導入に関して声明を発表 [2023年12月01日]
https://current.ndl.go.jp/car/197454