誤情報に対する大学図書館員の視点:追跡調査と比較研究(文献紹介)

米国の大学・研究図書館協会(ACRL)刊行のオープンアクセスの査読誌“College & Research Libraries” (C&RL)の第84巻第4号(2023年)に、“Librarian Perspectives on Misinformation: A Follow-Up and Comparative Study”が掲載されています。著者は米・シモンズ大学図書館情報学科のLaura Saunders氏です。

大学図書館員は、情報リテラシーの指導やツール開発を通じて誤情報の危機に迅速に対応してきたものの、授業でニュースリテラシーのスキルをどの程度教えているかについての研究はほとんどないとし、この研究では、誤情報に対する大学図書館員の認識と、教育における誤情報への対処について調査されています。

研究では文献調査に加えて、以下の項目に焦点を当てた質問調査が実施されました。
・学術図書館員は誤情報の問題と課題をどのように認識しているか
・大学図書館員は誤情報に関連した教育をどの程度まで組み込んでいるか
・大学図書館員は学部学生のニュースリテラシー能力についてどのように認識しているか
・誤情報に対する大学図書館員の認識やアプローチは、分野を超えた教員の認識やアプローチとどの程度一致しているか

質問調査では189の回答が得られたとあります。図書館員による誤情報への対処方法としては、コースをサポートするウェブガイドやチュートリアルなどの学習教材の作成が最も一般的な方法 (28.4%) であり、次に教員と相談してコースに合わせた指導を行う (25.2%)、学生に図書館のガイドや配布資料を案内する (21.8%) が続いたとあります。また、図書館員が誤情報について教えないとした理由として最も多かったのは、授業を担当する教員が誤情報に関連するコンテンツを要求していないため(37.5%)であったとあります。

Saunders, Laura. Librarian Perspectives on Misinformation: A Follow-Up and Comparative Study. College & Research Libraries, 2023, 84(4), p. 478-494.
https://doi.org/10.5860/crl.84.4.478

参考:
オーストラリア図書館協会(ALIA)とキャンベラ大学、図書館員・情報専門職の技能向上によるフェイクニュースや誤情報対策のためのパートナーシップを締結 [2021年10月11日]
https://current.ndl.go.jp/car/44956

米国図書館協会(ALA)、図書館におけるメディアリテラシー教育のためのガイドを公開[2020年12月14日]
https://current.ndl.go.jp/car/42759

E2423 – 図書館におけるメディアリテラシー教育のガイド(米国)
カレントアウェアネス-E No.420 2021.09.16
https://current.ndl.go.jp/e2423

E2178 – 2019年米国図書館協会(ALA)年次大会<報告>
カレントアウェアネス-E No.376 2019.09.19
https://current.ndl.go.jp/e2178

鎌田均. フェイクニュースと図書館の関わり:米国における動向. カレントアウェアネス. 2019, (342), CA1966, p. 12-16.
https://current.ndl.go.jp/ca1966