スペイン政府、2023年から2027年までのオープンサイエンス国家戦略を承認

2023年5月3日、スペインの科学・イノベーション省(Ministerio de Ciencia e Innovación)が、2023年から2027年までのオープンサイエンス国家戦略(Estrategia Nacional de Ciencia Abierta 2023-2027)がスペイン政府により承認されたことを発表しました。

オープンサイエンスに関する同国初の国家戦略とあります。戦略は科学・イノベーション省と大学省(Ministerio de Universidades)により作成されたもので、2027年までにスペインにおける科学研究の資金調達、実施、コミュニケーション、評価のプロセスについて、オープンサイエンスの原則を取り入れたものとすることを目標として掲げています。

同戦略にもとづき、2023年には2,380万ユーロの予算が確保されることとなっており、この公的投資は2027年まで継続される予定であるとしています。こうした施策により、スペインにおける科学活動の質、透明性、再現性を強化し、科学者間の普及と社会への還元を促進し、この新しいグローバルパラダイムにおいてスペインの科学界が直面する課題に対応する方法を考案することを目指すとあります。

戦略目標として、以下の4つが掲げられています。
・国のオープンサイエンス政策の実施による影響を考慮し、また国際的なエコシステムや欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC)への統合を促進するために、強固で明確な相互運用可能なデジタル基盤を保証する。
・FAIR原則を通して、国の研究・開発・イノベーションシステムで生成された研究データを適切に管理し、ローカライズ、アクセス性、相互運用性、再利用性を向上させる。
・すべての国民に対して、直接的・間接的な公的資金提供による科学出版物や成果へのオープンで自由なアクセスを原則とする。
・新しい研究評価メカニズムやインセンティブと評価のシステムを確立するとともに、オープンサイエンスの原則に沿って職務遂行できるよう研究者等の人材を養成する。

El Gobierno aprueba la primera Estrategia Nacional de Ciencia Abierta(Ministerio de Ciencia e Innovación, 2023/5/3)
https://www.ciencia.gob.es/Noticias/2023/mayo/El-Gobierno-aprueba-la-primera-Estrategia-Nacional-de-Ciencia-Abierta.html

Estrategia Nacional de Ciencia Abierta (ENCA)2023-2027 [PDF:31ページ]
https://www.ciencia.gob.es/InfoGeneralPortal/documento/c30b29d7-abac-4b31-9156-809927b5ee49

参考:
ウクライナの国家オープンサイエンス行動計画が策定(記事紹介) [2022年12月20日]
https://current.ndl.go.jp/car/168438

ラトビア教育科学省、2021年から2027年までのオープンサイエンス戦略の英語版を公開 [2022年08月31日]
https://current.ndl.go.jp/car/46743

E2536 – 欧州連合理事会採択のオープンサイエンスに関する政策指針
カレントアウェアネス-E No.443 2022.09.15
https://current.ndl.go.jp/e2536

E2485 – ユネスコ「オープンサイエンスに関する勧告」
カレントアウェアネス-E No.433 2022.04.21
https://current.ndl.go.jp/e2485

E2052 – FAIR原則と生命科学分野における取組状況
カレントアウェアネス-E No.353 2018.08.30
https://current.ndl.go.jp/e2052

尾城孝一. 「欧州オープンサイエンスクラウド」をめぐる動向. カレントアウェアネス. 2018, (335), CA1921, p. 20-22.
http://current.ndl.go.jp/ca1921

林和弘. 世界のオープンアクセス、オープンサイエンス政策の動向と図書館の役割. カレントアウェアネス. 2015, (324), CA1851, p. 15-18.
http://current.ndl.go.jp/ca1851

※本文の一部を修正しました。(2023/5/25)