CA923 – 中間報告「利用者ガイダンスの視点」:調査研究プロジェクト活動報告(6) / 三輪由美子

カレントアウェアネス
No.173 1994.01.20


CA923

中間報告「利用者ガイダンスの視点」−調査研究プロジェクト活動報告 6)−

国立国会図書館図書館研究所の調査研究プロジェクト「不特定多数を対象とする図書館における利用者ガイダンスのあり方」(CA873参照)の中間報告が,昨年10月に『利用者ガイダンスの視点:公共図書館等を中心に』(ILIS Report no.3)として発表された。

1992年10月に発足した当プロジェクトは,3つの主な研究段階を設定して活動を行ってきている。研究段階の最初は,利用者ガイダンスを考える際の視点を明確にするための理論的基盤作りである。次の段階は,最初の段階で挙げられた利用者ガイダンスのポイントとなる方策が,どのような状況であるかを調べる実態調査である。そして,どのような方策をどう組み合わせれば利用者は資料にアクセスしやすいのかを検証するのが第三段階である。

現在,第二段階である図書館の実態調査までプロジェクトは進展しており,1月に最終段階である小規模な利用実験を実施する予定である。以下に今までの研究の概略を紹介する。

[第一段階]利用者ガイダンスの視点の明確化

ここでは,既存の文献を調査した上で,理論的検討を行った。まず利用者ガイダンスの基本的な考え方を確認し,サインや利用案内などの方策をガイダンスの観点から概観することで,ポイントと問題点を洗い出した。さらに利用者ガイダンスが情報リテラシーの向上にいかに貢献しうるかを検討して,今後の研究の理論的基盤を明確にした。今回発表したのは,この第一段階の報告である。

この検討結果を受けて昨年5月に第1回図書館情報学シンポジウムが開催され,利用者ガイダンスの重要性やその具体的な方法について意見交換がなされた(CA890参照)。

[第二段階]公共図書館実態調査

第一段階で出された利用者ガイダンスのポイントとなる諸点について,首都圏の公共図書館10館を選び,昨年8〜9月にかけて実態調査を行った。調査した主な項目は,来館に至るまでの広報活動や屋外・館内のサイン,書架やカウンターなどのファシリティ,利用案内やチラシなどの配布物,読書案内やその他の人的援助である。また,各館で実際に資料の探索を行ってみることにより,ガイダンス実施上の問題点を実際に体験することができた。

資料へのアクセスがしやすい図書館と探しにくい図書館とがあり,利用者ガイダンスの諸方策によって,アクセスを改善する余地がまだあることがわかった。

[第三段階]利用実験

ここでは利用者が来館し,資料に至るまでにどのように利用者ガイダンスを利用し,またどのような利用者ガイダンスが有効であるのかを,実際に利用者に資料探索を行ってもらい,明らかにすることを試みる。

調査は1月中に実施される予定であるが,これにより,図書館の利用者ガイダンスのあるべき姿を明確にしようと,プロジェクトチームでは考えている。

三輪由美子(みわゆみこ)