CA901 – 中間報告「収集体制」と今後の取組み:調査研究プロジェクト活動報告(4) / 網野光明

カレントアウェアネス
No.169 1993.09.20

 

CA901

中間報告「収集体制」と今後の取組み
−調査研究プロジェクト活動報告 4)−

国立国会図書館図書館研究所の調査研究プロジェクトの一つである「国内における科学技術文献の資源配置と供給システムの実態調査」を担当するチームは,この7月で発足以来1年を迎えた(CA856参照)。同チームの活動予定期間は当初2年とされ,現在折返し点を通過したところであり,以下にこの1年間の同チームの活動,成果及び今後の活動予定を報告する。

(1)実施した調査

第1に,JICST(日本科学技術情報センター)−NDL(国立国会図書館)共同調査として,収集体制,蔵書構成,供給システム等に関する資料を作成,交換したほか,JICST(本部及び成増資料館)を訪問し,上記項目に関し実態のヒアリングを行った。第2に,外国雑誌センター館に指定された国立大学附属図書館のうち東京工大,東大農学部等を訪問し,収集体制,供給システム(主として相互貸借−ILLシステム)についてヒアリングを実施した。以上2つの調査においては,NDLとの比較,特にNDLが直面している問題についての各機関の取り組み方という角度から 1)コレクション(蔵書)形成過程とこれを資源として提供する過程における各機関の基本方針,システム及び財政的・制度的・人的な裏付け,2)効率的な収集・提供のために採られた方法等を基本的な視点とした。

第3に,NDLにおける利用(者)の調査・分析として,来館・郵送複写の申込票を対象とした調査を実施した(分析過程の一部を外部委託)。この調査においては,1)NDLの文献提供の中で科学技術文献の提供が占める比重,2)資料別,分野別,年代等からみた利用傾向,3)複写申込機関(者)の特徴と利用資料との相関関係等が基本的視点である。

(2)中間報告の発表

JICSTとの共同調査,外国雑誌センター館の実態調査及び文献調査をもとに,中間報告『国内における科学技術文献の収集体制−主要3機関の比較調査報告−』(ILIS Report no.2)を7月に発表した。同リポートは,資源配置のうち収集体制の部分を扱うもので,テーマ全体に対する中間報告という位置付けをしている。

リポートでは,収集体制を含む各機関の概要を把握したうえで,収集体制を構成する予算,収集方針及び選書体制に関する制度とその運用について述べている。また,NDL以外の機関については,総じて財政的に窮屈な状況の中で,有効な文献提供に応えうるよう利用度重視の基本姿勢のもとで,収集方針・選書の過程に利用度を反映させる方法が採られているのに対し,NDLについては,基本姿勢が広範かつ抽象的なこと,選書が図書中心であること,業務のシステム化が遅れていること等を指摘している。

同リポートに対しては,関係各位からの意見等が寄せられることを期待している。

(3)今後の活動予定

上述のように収集体制の調査及び報告が終了し,供給システムについても同様なリポートを作成中である。また,複写調査の分析結果についても報告書を取りまとめ中である。従って,今後取り組むべき調査の主たるものは,次の3つである。1)来館利用による科学技術文献利用(者)調査実施要綱をまとめ,本年9月に実施予定。基本的には,複写調査と同様な視点に基づいて行う。2)学術情報センターとの間で,蔵書構成(タイトル・ベース)の比較分析。学術情報システムを通じて構築された外国雑誌目録情報とNDLの外国雑誌目録情報との比較。3)科学技術文献の大量利用者としての専門図書館の利用調査。専門図書館に対するアンケート調査及び専門図書館の集中する筑波地区でのヒアリング等を予定。

これらの調査のほか,テーマに関連したシンポジウムを開催することを考えている。

網野光明(あみのみつあき)