CA861 – 共同保存利用の可能性を探る:保存フォーラム報告 / 企画課

カレントアウェアネス
No.162 1993.02.20


CA861

共同保存利用の可能性を探る−保存フォーラム報告−

国立国会図書館では昨年9月,専門図書館協議会関西地区協議会の協力の下に,京都,大阪,奈良の三府県に所在する公共図書館及び専門図書館に対して,図書館資料の保存と廃棄・除籍についてのアンケート調査を実施した。この実態調査は,国立国会図書館の関西館構想に示された,図書館資料の「共同保存利用」の現実的なあり方を探る目的でなされたものである。

この調査結果をもとに,11月27日大阪で「保存フォーラム:明日の利用のために−共同保存利用の可能性を探る」を上記協議会の後援を得て開催した。参加者は,三府県の公共図書館,専門図書館,行政関係者などであった。

フォーラムは実態調査報告,事例報告,懇談会の3部で構成された。

第1部の実態調査報告では,まず国立国会図書館総務部企画課が公共図書館のアンケート調査の結果につき報告した。

この調査(74館中65館から回答)からは,ほとんどの館が廃棄・除籍をしており,その大きな理由は破損とスペース不足であることが判った。また,資料の収蔵スペースに余裕がない館が6割あった。他館との間に共同保存・分担保存の仕組みがあるとしたのは少数だった。

次いで,専門図書館協議会関西地区協議会から専門図書館の実態調査報告が行われた。

同協議会では,今回実態調査に先立ち関西館構想へのアンケート調査を行っていたが,関西館への要望のなかで,複写,閲覧,貸出と並んで「共同保存利用」も大きな位置を占めていた。今回実態調査(30機関中26機関から回答)では,廃棄・除籍はほとんどがスペース不足のためで,特に製本雑誌の多いのが特徴であった。また,資料の収蔵スペースに余裕がない館が6割あった。関西館に対しては,単なる保存図書館の機能を越えて情報資料の集積・流通センター的中核機能が渇望されており,関西館のできるだけ早い時期での実現が多くの図書館から望まれている。

第2部では,滋賀県立図書館から,今年度からスタートした共同保存利用の実際について報告がなされた。これは昨年初めに新しい書庫が完成したのを機に始まったもので,市町村の図書館で持ちきれなくなった図書を受け入れて,特に県立にないものは必ず保存していく計画であることが紹介された。

第3部では『共同保存利用の可能性を探る』と題して懇談会をもった。公共図書館では,それぞれで将来構想が検討されているが,その中でも共同保存利用が視野に入っており,関西館もその一助として期待されていること,また実施に当たっては,府県立図書館が介在する方法や関西館が直接受け入れる方法が意見として出された。専門図書館からも,スペース不足が深刻化する中,早い時期での関西館実現を切望すること,また同館におけるブラウジング機能の必要性と,そのための直接閲覧サービスの充実に関する提言があった。

(総務部企画課)