カレントアウェアネス
No.161 1993.01.20
CA854
「学術情報と標準化」(第12回公開講演会)とその周辺
学術情報センターは,文部省科学研究費の助成を受けて,「東アジア文字データベースの国際交換に関する実証研究」の研究調査を,1989〜91年度の3年間に渡り実施した。この研究目的は,学術情報の国際的流通(東アジア地域内および欧米との間)の実現可能性を追求することで,特に東アジア文字,すなわち漢字を使用するデータベースの交換,相互利用を実現することである。
中国,韓国などの専門家,学識経験者を招へいして,この研究の枠組みの中で公開講演会が過去11回開催されている。これまでの主な発表内容は,韓国のデータベース構築の現状,学術情報管理の現状,情報教育・訓練の現状,高等教育制度,また,中国におけるソフトウエア研究,中国語情報処理の現状,中国国家図書館における自動化,中国科学院文献情報システムの現代化,中国MARCの利用などである。
今年度よりこの研究の継承として,「日本情報および東アジア文字による学術データベースの国際交換に関する研究」(1992〜93年度)が開始された。この研究活動の一環として,今回標記のテーマで公開講演会が開催された(11月20日)。
英国,米国,カナダ,韓国,中国,シンガポールから,標準化担当者(ISO/TC46<情報・ドキュメンテーション>関係者約10名)を中心とする各国の専門家が招へいされ,11論文の発表があった。招へい者はISO/TC46議長,各分科会幹事・事務局長および各国国内委員会委員長などであるため,講演内容は主にISO/TC46の活動内容および各国における標準化の現状と動向に関する報告であった。直接の国内関係者(ISO関係の各国内委員会委員)および関係業務を行っている人々には,各人の視野を広げる意味からも参考になったと思われる。招へい者にとっては,各国の標準化関連機関に対する知識を深め,ISO/TC46国内関係者を知る機会を得たことは,よりよい今後の標準化活動を軸とした国際交流の契機となったことであろう。
同夜,ISO/TC46国内委員会と学術情報センターの主催でレセプションが開催され,親しく招へい者と意見・情報交換ができたことは,われわれISO/TC46国内関係者にとっても人的ネットワークの強化および相互理解を深めることができ,意義深い一日であった。
田村貴代子(たむらきよこ)