CA855 – 現代アメリカの書票−第24回世界書票会議から− / 石垣香津

カレントアウェアネス
No.161 1993.01.20

 

CA855

現代アメリカの書票−第24回世界書票会議から−

1940年代から始まった世界書票会議は,50年目にして初めて今年我が国で開催された。書票会議は世界各地で2年毎に行われてきたが,今回は8月31日から9月3日まで,北海道札幌市で行われた。

大会では,いくつかの講演会及び展示会,書票実技講座,書票交換などが行われ,連日盛況をきわめた。会議の全容については,『びぶろす』10月号をご参照いただきたい。

ここでは,ジェームス.P.キーナン(James P. Keenan:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ在住のプリンター・Cambridge Bookplate社オーナー)氏による「現代アメリカの書票」と題する特別講演の模様を紹介する。

12年前(1980年)キーナン氏ははじめて書票の展示会を企画し,広く各分野からアーティストを募集した。この呼びかけには非常な反響があった。1985年に,米国書票収集家制作家協会(American Society of Bookplate Collectors and Designers)と彼とがハーバード大学で開いた書票の展示会は4〜5か月も継続し,大変な人気であった。

現在キーナン氏が刊行している書票のリストも充実してきた。このリストによって書票の注文が出来る。その情報内容は定期的に更新されており評価も高いと自負している。このように,アーティストに書票の制作を促し,さらに,作品が広く普及するように努めてきた。

1992年には,アーティストを力づけるため,ケンブリッジの書票団体がコンクールを開催した。このコンクールのPRをしたところ,大成功で,問い合わせが殺到し,コンクールの応募者は1200名に達した。応募者の中には,初めて書票を作成するというアーティストが多数いた。この書票作品は次回刊行の書票リストに掲載され,出品作品は方々の会場で展示される。この企画を推進しているのは,アメリカのPrinting Magazine社等である。

最後に,キーナン氏は現在刊行している書票のリストを図書館や美術館関係だけでなく,もっと一般に普及することを希望し,なお展示会は2年に1回開きたいと意欲的な抱負を語った。さらに現在アメリカのアーティストが実際に,どういう作品を作っているか,代表的なものを,約70点(木版,石版,リトグラフ,コンピュータデザイン,シルクスクリーン等)スライド上映があった。

石垣香津(いしがきかつ)