カレントアウェアネス
No.153 1992.05.20
CA803
二つの国立図書館の「センター・フォ・ザ・ブック」
1987年より,米国議会図書館(LC)のCenter for the Bookは読書に関する一般の関心を増大させ,読書人を育てようとする一連の運動(“the Year of the Reader”運動)を展開しているが,1990年には,若者における読書人育成の年として国家的な読書運動が展開され,成功のうちに幕を降ろした。Center for the Bookの名誉職にあるバーバラ・ブッシュ大統領夫人は,当運動への協力者等に対し,感謝の念を表した。
1990年における,若者に対する読書人育成運動は,LCのCenter for the Bookを中心に,30以上の国家機関と50以上の企業の参画により米国各地で繰り広げられた。特に今回,モンタナ州,ネブラスカ州,ニュージャージー州において,Center for the Bookと業務提携した図書センターの設立が認められた。また,読書普及運動の記念展示会は米国広報庁の協力により開催され,国内のみならずソビエト連邦の主要3都市にまで巡回された。
LCは,生涯学習としての読書の大切さを国民に認識させるために,1991年を生涯にわたる読書人育成の年として定め,さらに読書人の育成運動を展開した。
ところで,LCのCenter for the Bookと同様の機関が,1991年10月23日,英国図書館(BL)において設立された。
BLの機関(Center for the Book)では,図書のもつ役割を保持するために,英国における図書の状況,特に公立,学校図書館における図書館事業の現状等について調査し,政府に対し注意を喚起する等の機能をもつ。また,国家的視野で図書館界における問題点について討論できる場や,自前のコンピュータにより英国内のあらゆる図書情報サービスを提供する機能も持ち合わせている。
当センターには,出版協会の元役員,大学教授,BL職員等から成る諮問委員会が設けられており,英国の図書に関する重要な問題について検討を行う。
すでに,センター独自の活動として,CD-ROMが情報処理,情報提供,出版および図書館に与える影響に関するセミナーが開講されており,図書の歴史および図書の生産に関する展示会や類縁機関による巡回展も計画されている。しかし,研究助手を雇う予算もままならないほど,センター運営資金はかなり制約されている状況にある。
中渡明弘(なかわたりあきひろ)
Ref: Library of Congress. Annual Report of the Librarian of Congress. 1991 Brockhurst, Chris. New centre will monitor the book. Library Association Record 93 (12) 810, 1991