CA804 – 書目文献出版社の活動 / 岡村志嘉子

カレントアウェアネス
No.153 1992.05.20


CA804

書目文献出版社の活動

北京にある書目文献出版社は,書誌類や図書館学関係書の専門出版社である。中国では政府機関や大学の多くが出版部門を持っているが,この書目文献出版社も,実は北京図書館(中国国家図書館)の内部組織である。昨年9月末,北京・文津街の北京図書館分館にある同社を訪れ,李万健副編集長から概況説明を受けた。

書目文献出版社は1979年に設立された。職員は約70名。この中には,印刷カード発行業務に携わる職員も含まれる。編集者は30名余で,全員大学卒業程度の学歴を有する。編集部門は,図書情報学編集室,文史編集室,総合編集室の3編集室と,雑誌『文献』編集部からなる。

出版物の内容はおよそ3つに分かれる。第1は,図書館学・情報学関係図書,書誌,索引で,全体の50%を占める。第2は,北京図書館や中国国内の図書館が所蔵する貴重書類の影印本や翻刻本。第3は,現代の文学・歴史学関係の理論書だが,これは数が少ない。創設以来,既に600点,1,000万冊以上が出版された。現在も,年間50〜60点という出版数を維持している。

北京図書館の内部組織ではあるが,独立採算制がとられている。但し,職員の基本給は同じで,報奨金の水準も大差ないという。出版発行業務の年間予算は60〜70万元(約1,500万〜1,700万円)。出版内容の範囲や出版物の価格は国家出版局が決定するので,利潤の追求には限界がある。近年,物価高騰などの影響で出版業界も経済的に厳しい状況にあるが,今のところ,この予算の範囲内でやりくりできるという。数年前,自費出版の請負などで,本来の出版内容の範囲外の通俗書を出版したことがあるが,今は,そのような“副業”は行っていない。紙不足,印刷・製本設備の老朽化をはじめ,出版事業の発展を阻害する要因は多いが,良心的な出版を貫こうという姿勢がうかがえる。

ところで,1979年に同社が設立されるまでは,中国において図書館学,書誌,索引類の出版はきわめて少なかったという。古書に関しては中華書局がその任を負い,また,高等教育出版社が図書館学関係の図書をいくらか出版してはいたが,本格化したのは,79年以降,改革・開放政策でこの方面が重視されるようになってからである。

なお,同社の出版する書誌,索引類は,人文・社会科学系が中心で,自然科学系は中国科学技術情報研究所に所属する科学技術文献出版社が主として担当している。

岡村志嘉子(おかむらしがこ)