カレントアウェアネス
No.131 1990.07.20
CA679
香港の公共図書館瞥見
香港の公共図書館は,市政局公共図書館と区域市政局公共図書館の二つからなっており,前者は主として,九竜区と香港区(島)に代表される都市部を,後者はそれ以外の新界(New Territory)を中心とした地域を管轄し,それぞれのもとには,20余の分館が設置されている。
市政局公共図書館(Urban Council Public Libraries)は,1962年香港大会堂(City Hall)に開設された。現在28の分館と13のステーションをもっている。すなわち,九竜区に19の分館と一つの芸術図書館,7ヵ所の流動図書館サービスステーションがあり,現在その核となっているのは,1985年に設立された九竜中央図書館である。香港区の方には,分館が8館,6ヵ所のステーションが設けられており,大会堂公共図書館(City Hall Public Library)がこの中心的役割を果している。総館長1名,館長5名,職員総数は383名,総蔵書数は,図書,雑誌,新聞,マイクロ資料,視聴覚資料,地図等合わせて190万件といわれ,うち英文図書45万冊,中文図書は130万冊で,この中には,相当数の香港地方に関する文献のコレクションが含まれている。そのほかカレントの新聞,雑誌800タイトル,視聴覚資料,マイクロ資料等7万件である。全館の年間貸出件数は720万件,閲覧資料は58万8,000冊,マイクロおよび視聴覚資料は15万9,000件,閲覧登録者数147万人となっている。香港区の中心である大会堂公共図書館には40人の職員がおり,23万件の資料を所蔵している。1日の利用者は約1,000人,図書の貸出冊数は1,200〜1,500冊。また九竜区にある芸術図書館には,芸術全般,美術,音楽,演劇,建築関係図書4万2,000冊が備えられている。同館は英文図書2万4,000冊,中文図書1万3,500冊,楽譜3,800冊の他,8,200件の視聴覚資料,関連分野の雑誌158タイトルを持つ。
それぞれの図書館は,成人借閲図書館,児童借閲図書館,視聴(覚)資料室,報刊雑誌閲覧室,推広活動室,学生自修室等の部分に分かれており,市民のための貸出,閲覧,レファレンス等のサービスを提供するほか,随時読書に関する討論会,良書の推薦,展示,テーマごとの図書展覧会,各種の講座,美術展,音楽会,映画会などを開催し,幅広い活動を行っている。
区域市政局公共図書館(Regional Council Public Libraries)は1978年市政局から分離して以来,新界区を担当するようになり,1986年正式にこの名称となったもので,21の分館と二つの流動図書館をもっている。職員総数は200名余,英文図書30万冊,中文図書75万冊,約1,400タイトルのカレントの新聞,雑誌,ならびに5万5,000件のマイクロ資料,ビデオその他の視聴覚資料など,合計110万件を所蔵する。1987年に30万件の資料をもつ沙田中央図書館を設置,ついで1989年には屯門中央図書館が成立,この二館が活動の中心となっている。
なお香港の出版物は,年間6,000〜7,000点(うち中文資料は約35〜40%を占める)とされている。出版された資料は,布政司署書籍註冊処(Books Registration Office)へ5部まず納本され,これらは,それぞれ英国,市政局公共図書館,区域市政局公共図書館,香港大学,香港中文大学へ配布される。一般出版物と政府出版物をあわせた出版物の目録として,A Catalogue of Books Printed in Hongkong が季刊で刊行されている。
各期(号)は1,500〜1,700タイトル収録しており,配列は英文資料は著者のABC順,中文資料は書名の筆画順となっており,第4期の末尾に著者索引,出版社の一覧,逐次刊行物一覧などが付されている。政府刊行物については,別に『政府刊(行)物目録』(Government Publications Directory)が出版され,それによって内容を知ることができる。
中原ますゑ