カレントアウェアネス
No.142 1991.06.20
CA746
AUSTR0M
オーストラリア国産の書誌情報データベースとしてははじめてのCD-ROMが,オーストラリア国立図書館(NLA)と国立メルボルン工科大学(RMIT)の共同事業として,1990年4月に発売された。このCD-ROMをAUSTROMという。これは,RMITがNLAに話をもちかけたのがきっかけとなり,これら2つの機関の他に9つのデータベース・プロデューサを入れてはじまった(その後2つを追加)ものである。1991年1月現在で,以下のような13のデータベースが一枚のCD-ROMにおさまって提供されている。(以下 データベース名 収録年 作成機関 データ件数 分野 の順に掲載する)
AEI (Australian Education Index) 1978- Australian Council for Education Research 45,522 教育
APAIS (Australian Public Affairs Information Service) 1978- National Library of Australia
157,906 社会・人文科学
ARCH (Australian Architecture Database) 1980- Stanton Library, North Sydney Municipal Counci1 8,584 建築
ASCIS (CRA) (Australian Schools Catalogue Information Service (Curriculum Resources Abstracts) ) 1970- Curriculum Corporation 7,336 教育
AUSPORT (Australian Sport Index) 1988- National Sport Information Centre 4,199 スポーツ
CINCH (Australian Criminology Database) 1976- Australian Institute of Criminology 20,635 犯罪学
EDLINE 1980- Victorian Ministry of Education Library 5,341 教育
FAMILY (Australian Family & Society Abstracts) 1980- Australian Institute of Family Studies 12,060 児童・家族
HEI (Home Economics Index) 1990- Victoria College Library l,673 家庭
IRAB (Index to Reviews of Australian Books) 1989-1990 National Centre for Australian Studies,Monash Univ. 約900
LEISURE 1982- Footscray Institute of Technology Library 22,386 レジャー,観光
PINPOINTER (Australian Index to Leisure Activities and Consumer Reports) 1987- Bray Reference Library, State Library of South Australia 13,100 趣味・娯楽
WESTDOC 1984- Footscray Institute of Technology Library 8,914 メルボルン西部の地域情報
以上の内訳からもわかるとおり,NLAがプロデューサであるAPAISが,約16万レコードとサイズが一番大きい。残る12のデータベースは,まだデータの蓄積年月が浅くレコード数が数千台のものから,数万に至るものもある。主題は,社会・人文系。プロデューサはNLAをはじめとして,みな専門的な非営利機関である。これらのデータベースの選択基準は,商業ベースにのりにくい非営利機関の作成している各分野の基本的書誌情報ということになるだろうか。データベースのプロデューサも,まとめ役となる国立図書館とRNITも,ともに非営利機関であるため,利益をあげることが第一ではなく,国立図書館の担当者によれば,「赤字でさえなければかまわない」という方針であり,「現在ほんの少し利益をあげはじめたところ」だという。
AUSTROMの検索ソフトウェアは,米国カリフォルニア州に本社をおくKnowledge Access Internationalの開発したKAware2tm Information Retrieval Systemである。そのシステム採用の理由を,「とびきり最先端で洗練されているというわけではないが,かといって単純すぎない,ちょうど真ん中」だったからと,担当者は語っていた。AUSTROMのターゲットとなる利用者は,高校から大学レベルの学生である。図書館員の助けを借りなくても,利用者が自分でマニュアルを見て,検索できるよう,複雑すぎないもの,しかしある程度の高度な検索機能を持つものということが,採用の基準であったということである。筆者が検索のデモンストレーションを見たところでは,メニュー方式で,採用の目的にかなった妥当なものと思われた。
さて,このAUSTROMの値段であるが,年間3ディスクで約16万円(一枚のみで買った場合は約6万円)。学校図書館には割引があり,年間約5万5千円(一枚約2万3千円)。販売を開始して実質的に約9カ月たった1991年3月現在のところ,約230の購読申し込みがあった。主な対象である学校図書館の中で,実際まだ予算がおりず契約までいっていなくても購入を希望する図書館は,この他にかなり多いということである。将来の計画として,担当者は,今後もなるべく多くの社会・人文系のデータベースを加え,内容を充実していきたい,また可能性があれば,いずれ日本にも紹介していきたいと語っていた。
中島 薫(なかじまかおる)